B-CLUB 1/220 レジンキャストキット RX-78GP-01Fb ゼフィランサス フルバーニアン Ver. Ka. がやっと完成しました。無改修のただの素組みではありますが僕にとっては(主にスチロール樹脂製)プラスティックモデル以外の模型を完成させたのは初めてのことだったのです、たぶん。キット内容はパーツ数 74点、あと頭部のアンテナは0.5oプラ板から自作です(この点が製作に入るまでのネックとなっていました)。材質は、ナイフがサクサク入り、欠け部へのパテの食いつきもよく、工作はラクチンです。プラモのようにいちいちパーツをすり合わせて接着剤を塗って組み立てる手間がなく、ムクで一体成型なのが楽なところです。ただ、組み立てに際してはダボのようなガイドがほとんどなく、接合すべき面も浮いてしまっていたりするので、適当にアタリを両面にけがいてピンバイスで穴を掘り、真鍮線(強度を要する箇所)やアルミ線(微調整を要する箇所)などの金属線によって接続する必要があります。僕は最近のガンプラだったら、スナップフィットの強力なダボを一部斜めカットしての仮組み作業なんて工程を踏まないダメダメ省力モデリングなので、自在に取り外しができる金属線接続で仕上げ前にだいたいの構成やフォルムが見られるというのは完成形をイメージする上でとても有益でした(接続線を長めの金属線に換えればへなちょこ棒代わりにもなりますし)。今回のフルバーニアンも仮組みによってガンプラでは得られないような遠慮無用のカトキっぷりに製作意欲が持続し完成に至りました(ガンプラの ver.Ka ガンダムは、デザイナーズブランドを全面に推し出したわりにはまとまってバランスのいいポップな折衷案的印象を受けましたけれども…)。
今回のこのフルバーニアンキットのイメージソースは、河森正治御大の有機的ラインで立体的整合性の取れない(今見ると笑える)設定画稿などではなく、OVA 「機動戦士ガンダム0083 スターダストメモリー」の劇中のイメージでもなく、無論バンダイの優秀キットであるゼフィランサス陸戦用にエッジのダルい増加パーツをかぶせたチグハグなフルバーニアンでもなく、「機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光」劇場版パンフや B-CLUB でグラビアに描かれたカトキハジメの手になる全面カトキラインで整理されたフルバーニアンだったようです(ガンプラ史上初の絶版キットとなった (*) 1/144 HG ガンダム のインスト(挿絵:カトキハジメ)のリファイン版リックドムみたいな存在ですね)。僕は劇場版のパンフとカトキ版フルバーニアンが表紙の B-CLUB と、それらを参考にモデルグラフィックス誌の旧キット改造作例として発表されたカトキ版フルバーニアンしか見ていませんが、今回のさらにピーキーなカトキ風味のレジンキャストキットがオレを物欲の獣の目に変えたのでした。 (*) ガンプラは初期の 1/144 ガンダムシリーズから始まって、同アイテム同スケールでより高機能/高品位な新製品が発売されても、それ以前のすべてのガンプラを長いスパンである程度の量を生産しているといわれています。模型店の店頭にいまだに並んでいる旧製品たちは決して昔の売れ残りというわけではなく、現在も少量ながら流通し、それなりに捌けているというのです。プラモデルをつくる金型というのは製品を生産し利益を生む財産ですから保有しているだけでたいへんな税金がかかる筈です。大方のメーカーならば『欲しがっていた人たちには初期生産でほぼゆき渡ったから再生産しても利益が薄い』として生産完了とすることがままあるのですが、そう考えるとバンダイはスゴイですよね。1/144 HG ガンダムはべつに 1/144 HGUC ガンダムという新標準の後継機が出たから絶版になったのではなくてパズルのような多色一体成型スライド金型の傷みが激しい為だそうです。たとえばガンダムのボディ前部 1パーツに青、赤、黄色の成型色のプラが組みあがった状態でランナーにつながっているという豪快な成型だったのです。このシステムインジェクションは「機動戦士Vガンダム」の頃まで一部使われたようですが、塗装するユーザーにはまったく益が無い上に、生産に金ばかりかかる多色スライド金型は廃れ、各色毎にパーツ分割した現在の色プラの隆盛となりました。
僕はガンプラのようなフル可動、完全変形モデルでもトイのようにガチャガチャ遊んだりしない方なので「これしかないだろ!」ってなポージングや形態があればそのままそっとしておいて眺めてます。無変形ガンダム系では素立ち以外にポーズをつける気がしませんし、ゼータならウェイブライダー、イクスェスならGクルーザーにしてしまうともう元に戻す気がしません。といって無変形モデルが欲しいのではなくて完全変形する確証を得た上で、もっとも美しいかたちに変形させ、その美しい機体が人型 MS にも変形し得るというポテンシャルを秘めていることに悦楽を感じるのです。まあ変形モデルの嗜好は置いといて、今回の実質無可動(若干ポージングを変えて組むことは可能)な 1/220 フルバーニアンですが、関節ギミックを組まないで済むのだから楽なものです。で、どんなポーズにするかですが、パッケージの青色モノトーン完成品写真では、ひざを曲げて足を開いて飛行ポーズっぽく、両ひじを若干曲げて右手のビームライフルを上げ左手のシールドを設定通りにマウントして下向けにセットしています。フルバーニアンはゼフィランサスの空間戦闘仕様ですから飛行ポーズはごく自然でしょう。ビームライフルも少し上げると表情が出てくるでしょう。最大のネックはシールドが肩部の突き出たバーニア群パーツに干渉する(てゆうかむしろ逆?)ことで、ジムカスタムのシールドのように上端切り欠き部の横棒が無ければ RX-78-2 系の素立ち同様に位置できるのですが、キットのパッケージ写真ではシールドを前から見てやや裏向けにセットし、さらにひじを曲げることで干渉を回避しています。さて、じゃあ自分はどうつくるか。飛行ポーズではディスプレイスタンド(つーか棒)が要ります。GFF のイクスェスのようにブースターが重すぎて自立できない場合はともかく(アレはアレでつま先をのばせるのでカッコイイ…)スタンドの使用は本意ではありませんし、重心位置付近を貫いてかつ目立たない部分を探すのも虚しく思えます。やはり現実的かつ自分の嗜好に合致する素立ちポーズで完成させることに迷いはありませんでした。
問題はやはりシールドの装着です。パーツには前腕部外側に台形のくぼんだラッチがあり、パッケージ写真もその位置にシールドを装着しています。あ、でも河森正治版の設定画稿にはラッチがありませんね。まあ手で持つのが最も自由度が高いのでアニメ向きではあります。シールドを使ったアクションとかね。あぁ〜、しかしメカ好きな観客層にとってはフルバーニアンのコアファイターによる脱出だとかデンドロビウムから突然意表をついて分離して近接してきたドラッツェを切り払うステイメンとかそーゆー媚びた演出は自粛(?)されていたのかどーにも合点がいきません。コアファイターが作動しないとかいうのは致命的欠陥だし、I フィールドジェネレイターを失ったデンドロビウムに対してステイメンの分離をとめる為にビーム撃ち放題のガトーのノイエ・ジールがしがみついてくるのも不自然な気もします…ま、アニメ版の話はともかく、今回のフルバーニアンの前腕部のラッチですが、ステイメンのシールドマウントラッチと同型のもののようです。しかし前腕外側(ひじ側)にシールドをつけるなんて安彦良和超御大の漫画版のガンダム(スミマセン…実はよく知らないのです)みたいにひじを曲げてシールド下端を上向きにして防禦するってのと同じだし漫画映えはしても(防禦ポーズは)模型映えはしない気がします(バリエーション機を何機か並べるなら別ですが)。いや実際普通に立った人体の前腕は前に向いて曲がるのが普通であり、ひじ側につけたシールドなんてのはやはり安彦案のように使われるのが合理的であり、素立ちなら左前腕部外側のラッチにシールドを装着して前から見てシールド裏側を向けるというのもアリなわけですが…。パッケージ写真を参考に設定とは少し違う色分けでそれらしいデカールを貼ってそこそこきれいに仕上がったシールドだったので見えるようにしたいという気持ちもあります。肩のバーニア群ブロックさえ無ければ、ひじ側を外側に向けることで素朴にシールドを体側面に装着できるのですが。…と、発売されて久しい GFF のゼフィランサス陸戦用の場合、同様にラッチがあるのですが、シールドの方にアタッチメントがあり、前腕部外側のラッチに接続し90度まわって前腕部左側面にシールドがきて、さらに左手首で握るグリップ(握り手)があるというものでした。このアタッチメントを自作するなり流用するなりできればいいのですが、そーか、側面につけるのもアリか、という安易な根性で左前腕左側面にピンバイスで穴を開けてシールド裏側のマウント部と金属線で接合することにしました。肩部を避ける為に多少斜めになりますが、これで一応体側面にシールドが装着できました。ああ、あまりに安直すぎてほろりと泣けてきます。
可動戦士並の関節自由度があるキットや山口式可動のようなポージングが僕に創出できるのならカッコイイポーズにしようとか目論んでもおかしくないのですが、それでもカタチがこれだけ魅力的ならば素立ちが最も似合うと思ってしまいます。仮にポーズをつけるにしても肩部は(このキットには珍しく)ボディから突き出た四角いダボにフレームパーツをはめて、そのフレームの上に肩アーマーをかぶせ(ダボなし)、下に二の腕を接続する(ダボなし)というパーツ構成なので改造・新規パーツ製作をしないことには肩は自由に動きません。肩がまったく動かないというだけでほとんどのポージングは不可能になります。二の腕は曲がると不自然ですが接続金属線を軸に回転は可能です。ひじとひざは角度を決めてから金属線接続すれば曲げた状態にすることができます。足首はすね下端と面接合する筈ですがかなり隙間が浮いているので金属線をスペーサー代わりにします…だからつま先をのばすことはできます…足首のフェアリングを追随させる改造は必要ですが。股関節は単にダボに金属線の軸を通すだけなので自在に調整できます。スカートはフンドシのどこにつけるか現物合わせなので上体と脚部を仮止めして位置決めし、リアスカートは単にフンドシに固定接着、フロントスカートはフンドシを貫通する金属線を軸に無意味に可動、サイドスカートはフンドシ上面腰部板状パーツが無いのでフンドシとの接点が無く脇腹から生えていてもおかしいのでフンドシの股関節上部を貫通する金属線の先っぽに浮かせてつけました。つまり無改造ではパッケージ写真程度のポージングが精一杯なのです。
最後になるので本音をひとつ。姿勢制御用のバーニアを満載したフルバーニアンは、モビルスーツの最大の利点であるところの作動肢の運動反作用による姿勢制御、 AMBAC : Active Mass Balance Auto Control (能動的質量移動による自動姿勢制御) という人型兵器の有効性の立脚点を、ある意味反故にしてしまっていると考えられます(かつて全身に多数のバーニアを装備したモビルスーツが存在したことはさておいて…)。バーニアポッドが AMBAC 作動肢にもなるとも考えられますが、ジムカスタムやジムキャノンII 等と同様の機体規模で約2倍のバーニアスラスターを吹かし続けていれば短時間でプロペラントが底をつくことは明白です(バーニアポッドそのものがプロペラントタンクではある筈ですが)。ガンダム世界の史実として、モビルスーツ開発黎明期にジオニックの提示した AMBAC 装備の機動兵器に対して MIP(エムイーペー)のバーニアのみ装備した機動兵器がプロペラント消費量、すなわち作戦行動時間において大きく水を開けられて敗退しているのです。現実の世界において同様の兵器体系が形成されるとは考え難いですが、少なくともガンダム世界においては人型モビルスーツが戦争の主役である為に厳守すべき約束事だった筈です。フルバーニアンのオリジナルデザインの河森正治氏は、このへんの約束事を初めて明確化し提示した「ガンダムセンチュリー」(みのり書房)の重要な科学考証スタッフ兼イラストレーターのひとりだった筈なのですが多忙故に過去の仕事はすっかり忘れ去っているのかもしれません。ゼフィランサスにブースターポッドを追加するというコンセプトは同氏デザインの VF-1 バルキリーのスーパーパックと同様にも思えますが、VF-1 の追加ブースターは本体の反応エンジンの二次元ノズルではなくお椀形ノズルの核パルスエンジンというプロペラント容量をあまり気にしない強力無比な別次元の推進機構なわけで(当然艦内や大気圏内では危なくて使えない)、U.C.0083 という未だに一部の熱核ロケットエンジンと多数の化学ロケットエンジンが混在する世界においては実に安易なデザインワークといえるでしょう。たぶん演出側から『今度出てくる改修型の空間戦闘用ガンダム1号機はスーパーバルキリーみたいなのにしてくれません?』とかなんとか無茶な要請があったんじゃないかにゃ〜、とか思ったりもしますが。 |