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2003年 5月 26日(月)

さて、手元には取説すら無いのでうろおぼえですが、やまと製 1/48 VF-1A マックス機の感想いきます。
…というわけにもいかないので久里さんの 特集【1/48完全変形版VF-1】 を参照しつつ、思うところを書いてみます。ちなみに久里さんのスタンスはイヴュマーとほぼおんなじです。変形プラスチックモデルキットもトイのうちと考えているし、やまと 1/60 VF-1 の脚部差し替え変形は完璧なプロポーションとの引き換えとはいえいちいちめんどくさいと思っています(というか変形させる気もしない)。だから僕の言いたいこともほとんど書かれているのですが、なるべくカブらない程度にいってみましょう。

まず、箱を開けるとファイターモードでバリアブルジオメトリー翼(以下VG翼)を前進した(開いた)状態でパッケージされています。だからコイツはヒコーキです。たまたまロボットに変形もしちゃうけど。ヒコーキモデル(≒ヒコーキ)の最大の見せ場はコクピットですよね(完成品だからちょっと違うけど)。付属のマックス君人形は塗装も精緻でイカスのですが、乗せてみると残念ながらスティックとスロットルらしき大味なモールドに両手が届いてなくて宙に浮いてるのですが気にしないことにします…でも人形の両腕は別パーツで軽く力を入れるとポロッと取れてしまうので調整できるかもしれません。サイズ的にきちんと劇場版のバランスでコクピットは狭苦しく具がぎっしりなイメージです。設定上、現用戦闘機よりひとまわり以上小さいヒコーキなのでとくに劇場版ではパイロットがむき出しの感じです。同じくバブルキャノピーの米空軍の F-16 でさえ肘からむこうは一面の空ということで『慣れない人が乗るとむこうに落っこちそうな気分になる』と聞きます。ならばこれほど露出度の高い VF-1 のコクピットはもっと怖いのでしょう。そういえば永○護が自分の絵を戦競で描かれるということで百里に行ったとき、F-15Jに乗ってみてその視界の広さに『数mの高さに生身でさらされているようだ。こんなに無防備で怖いコクピットで戦わせるなんてあんまりだ』というようなことを言っていたのを思い出します。 VF はファイター時には非装甲の透明キャノピーになるのというのは慣用的(非ストレンジ)リアルからの要求ですが、まあ1999年から2010年、つまり架空の現代を舞台にしていることを思えば「戦闘機っちゅうもんは 透明キャノピーでなきゃアカン」という元パイロットのお歴々が幅を利かせているのかもしれません。僕は個人的には(変形しなくても)「エースコンバット3 エレクトロスフィア」などのような全面装甲キャノピーがカッコイイと思うのですが(思考制御はいき過ぎな気もしますが)。戦闘機を "エアロコフィン" と呼ぶのもカッコよかったなぁ。

キャノピーは正面からだと一目瞭然なのですがΩ型のバブルキャノピーです。ハセガワのファイターキットで経験済みの方も多いと思いますが、逆テーパーのバブルキャノピーの成型上、必然的に生じてしまう中央のパーティングラインはどこ?と首をひねってしまいます…そうか、中国の手先が器用な方々が手作業でヤスってコンパウンドで磨いて消しているのか!マジ!?でもそうとしか考えられませんよね?恐るべし中国人。まあカリカリのヒコーキプラキットの透明キャノピーなんかと違って相応に肉厚のパーツなのでヤスってるうちに力を入れすぎて割ってしまうこともないでしょう。あ、専任の工員さんなら当然そんなドジはしないか。

ヒコーキモデルとして次に目がいくのがランディングギアですよね(個人的にはディスプレイモデルとしてどちらか選ぶならギアアップしてハッチを閉じたフライングタイプで上下左右から眺められる方がヒコーキがヒコーキしていて好きなのですが…可動で両方選べるのなら逆にギアダウンして置いときますけどね…)。首脚(ノーズギア)には色分けされたブレーキパイプや可動式のランチバー(すぐ取れちゃうんだけど)まで再現されています。主脚(メインギア)は後方に支柱があり艦上機(*)らしくガッシリとした作りなのですが、ギアのハッチ片側 3枚展開っていうのはちょっとゴツすぎて…エンジンどこに入るねん!というワケで駐機状態で飾っておくときには一番後ろのハッチはギアダウン後に閉じておいた方が気まずくなくてよいと思います。実際のヒコーキでもそうするのが自然だし。あ、設定上は(バトロイド形態透視図の設定画を見る限り)主脚はエンジンとのギリギリのクリアランス内に90度ひねってタイヤが平たく格納されることになってます、一応(このトイにはそこまでのギミックは要求していませんが)。(*) 航空母艦で運用する航空機を艦載機と表記するのは白痴マスコミの濫用を鵜呑みにした誤りです。
んで、謎の左右の赤青クリアパーツなのですが…ファイター時のギアダウン状態で主脚ハッチの一部としてそれらしく前方を向くのですが、この位置にこの色のライトが必要なのでしょうか?逆にこの大きな赤青ライトの発光は翼端灯に誤認されると非常に困ったことになるのではないでしょうか。設定上はカラー画稿でも黒く塗りつぶされているのでライトとも限りませんし。仮に夜間着艦用の白色ライトであってもノーズライト(ついてるかどうか不明)でこと足りますよね?たぶん。バトロイド時の左右端灯でしょうか?個人的には、全天候型の陸戦兵器でもあるわけだからバトロイド時の(とくに足元の)前照ライトだと考えているのですが。どっちかというとバトロイド時の肩のオレンジ色クリアパーツも白色の前照ライトだと思うんだけどなあ…設定上黄色ですが…装甲車にも戦車にもヘッドライトは必要なんだし、二本足で歩行/走行するとなれば夜間に足元が見えないのでは一歩も前進できないわけであり。ま、見解の相違はともかく、なにゆえ赤青クリアパーツをつけたか、やまと本人に聞いてみましょう(プルルル)…調べて折り返し報告します?…監修を受けたから?なにがなんでも監修のせいです?ハァ?意味を聞いてきます?…その後連絡途絶。で、赤青の是非はともかくクリアパーツにするならするで裏打ちしておかないと反対側からも見えるので変です。あ、重箱の隅をつつくようですが設定上主脚ハッチから出てくる筈のアレスティングフックはありません(バンダイのハイコンプリートモデルにはあったけど)。もしかしたら久里さんは首脚のランチバー(カタパルトのシャトルにひっかけて、離陸すると跳ね上がるアレ)と混同されているのではないでしょうか。しかしアレスティングフックが左右 2本あるというのもコワイかもしれません。通常なら、成功して重心位置を通る制動が得られるかまたは失敗して複行するかを選べますが、万一左右で展開角度が違うとか若干傾いてタッチダウンしたなどして片側1本だけひっかかってしまった場合複行は不可能で重心位置から外れた制動を受けるわけで…スピン?…外れるか折れるかしないとスピンには陥らないかなぁ…少なくともひとつで満足するものを倍の重量のふたつを装備して、安全性を二重化させるどころか逆に危険性が増すのではないかと思われるワケであり……なによりトイとして見たとき左右主脚庫から細長いパーツがぷらんぷらんとしているのはかなりウザイです。だいたいどうやってワイヤから外したあと離陸可能状態(主脚庫に格納)にするのか?疑問は絶えませんがそんなパーツはついていませんのでご安心ください。

さて、ヒコーキがヒコーキたる所以である翼です。航空機には回転翼機と固定翼機がありますがヒコーキといえばだいたい固定翼機のことですね。暗黙に翼がついてるのが前提なわけです。マクロス世界では異星人の廃棄艦から得た "オーバーテクノロジー"(いい設定だなぁ)がありますから重力制御でも空は飛べます。空戦ポッドに限らずパワードスーツの類も翼無しで立派に飛びます。昔読んだ M.A.T.製作の同人誌の設定によれば VF-1 にも局部的な重力制御が適用されていて、主に変形時コクピットにかかる不規則な殺人的重力加速度を緩和しているとか(あ〜、借りてる間にコピッとけばよかったーという本で、わかりやすくいうとアニメ「機動戦士ガンダム」に対するムック本「ガンダムセンチュリー」(みのり書房・長らく絶版、再販本が出たらしい)のモビルスーツ考察部分で、今となってはパブリックドメインソフトとして半オフィシャル設定となっている、といえばわかりやすいでしょうか)。純粋に空力だけで飛んでいる、といえば「SFマガジン セレクション 1984」(*)に収録の神林長平「被書空間」における、対コンピュータフリゲート "レジェンドラ" という重力制御などの魔法を駆使する超科学側からの、近未来科学側である雪風の描写に尽きます。
> 「あんなものが飛ぶなんて奇跡だな。(中略)だけど、きれいだな。危ういうつくしさがある」
(*) 奇しくもジョージ・オーウェルの有名な小説の題名と同じこの年の一冊はとくに濃ゆい内容だったと思います。図書館でガキの頃読んでガツーンときてたびたび未返却通告電話を受けました。新刊では絶版必至なので古本屋をまわって、とも考えましたが副産物としてインパクトの薄い年のも含めてなんとなく揃いはじめつつ、その有名な同名小説や同名映画をみたりしつつ、結局のところ神林長平の著書は見る即買う本とかで無難に落ち着いてしまって、SF方面へは頻繁には足を運ばないアニメ者ということで。いいじゃん。
[6/16] 蛇足:航空機にはまず重航空機と軽航空機がありましたね。軽航空機てのは飛行船や気球などのことで、動力無し常に揚力を発生させることができるのが長所といえば長所でしょうか。

えー、脈絡無く話がそれましたが、翼ですね、僕はだいたい翼断面形をしていればべつに『後縁はカミソリ並に鋭くなければウソだ』とかいわないし(今ゆってんじゃん)、実際ガチャガチャ変形とかさせて遊ぶのにケガでもしそうなパーツがあると困ります。翼断面といってもスーパークリティカル翼型がまだ採用されているかどうかなんてわかりませんし、どーでもいい箇所かもしれません。ヌルイですね。でもさすがに主翼後縁フラップ可動というのはどうか?というのは微妙なポイントです。いや、正確にはフラッペロン、すなわち内側のフラップと外側のエルロンがともに下がって大きなフラップになるわけですね。久里さん、フラップ(高揚力装置)は下げるものであって、上げるなんて事態はそうめったに無いと思います(たぶんそう動くようにはつくられていない筈)。でも前方ショットでは主翼が細くなったとしか見えないし、後方からのショットでは単なる油圧切れにも見えるかな…設定上油圧か電動か不明だし、仮に油圧だとして、どこがどー垂れるかは不明。やっぱこのフラップはアプローチという状況にハマると思います。ギアダウンして、フラップダウンして、スロットル操作による推力増減で高度を調節し、スティック操作によるピッチ角変更で速度を調節する…ごめんなさい!僕「エナジーエアフォース」 F-16 ライセンス取れてません。2,3度トライしてみましたが着陸成功確率はかなり低いです。ふわっと舞い降りるつもりが降下角度や速度が高すぎて、ということだと思います。「わたしのファルコン」では『空母に降りるときは、ドスンでは甘い、ドカンだ』というような豪気なセリフがありましたが、それは『できる人の理論』なんですよね。限界を肌で知り、さらに一歩危険域へデリケートに踏み込めるかと。

また話がそれましたが、舵面の動きは左右連動で、左右同方向(ほとんど同角度)に動いたり、左右逆方向(左右の角度は最適になるよう異なる値をとる)に動いたり(差動)するものです(スポイラーなどは左右片側だけ展開することもありますが)。最低限の操縦を行うために可動が必要な舵面は、さていくつ?…といっても VF-1 はほんのちょっと特殊なので、よく似ているといわれる(けど実はぜんぜん似てない)ノースロップ・グラマン F-14 のような VG翼、双垂直尾翼の場合を考えてみます(でも F-14 って時代遅れの VG翼はいうに及ばず、ボテッとした機首がキライなんですけど)。
まずスティック前後で縦操縦・ピッチコントロールを行うエレベータ(昇降舵)は左右 2枚の全遊動式の水平尾翼が上下に同方向・同角度に動きます。
次にスティック左右で横操縦・左右ロール(横転)を行うエルロン(補助翼)は主翼後縁外側(高速時は内側)の左右 2枚の舵面が左右逆方向に動きます。補助的に差動水平尾翼がありますが、これらはエレベータとしてはたらく場合と違い、水平尾翼が左右逆方向に動きます。高速時、VG翼が後退した状態ではエルロンが使えないので差動水平尾翼だけで横操縦を行います。
最後にフットペダル左右踏み込みで左右ヨーイングを行うラダー(方向舵)は左右垂直尾翼の左右 2枚の舵面が同方向・同角度に動きます。垂直尾翼は 1枚でも一向に構わないのですが、高速時や大迎角時の安定には広面積化が必須で、同じもの 2枚にするという手を使っても同様の効果があります。ソ連の MiG-25 がハシリですが、のちの米軍の F-14、F-15、F/A-18 のような双発の現用機はそろって双垂直尾翼です。
ついでに高揚力装置であるフラップは主翼後縁の左右の舵面が下がります。エルロンと同じ舵面を使用しますのでフラッペロンともいえます。フラップダウン時、エルロンとしても使われる舵面は左右逆方向ではなく同方向(下)に動くことになります。
以上が現用機(といっても退役間近)の F-14 の基本的な舵面です。これに比べて VF-1 の場合、水平尾翼がありません。機体後部斜め下に小さなフィンがありますが、ベントラルフィンに相当するものでしょう。水平尾翼の代わりをするのは 2次元ベクタースラストノズルです。マクロス放映当時は YF-16 CCV や T-2 CCV のように通常形式の翼に加えて 2枚、3枚と翼が増えていく方向が高性能化であるかのように思われていたので VF-1 のように 2枚の翼を減らした形式に受け手の抵抗があったそうです。今となっては F-22 に装備されているのと同じものだし、当時からこの手のノズルを装備したエンジンは存在していたわけですが。
2次元ベクタースラストノズルはエレベータや差動水平尾翼の代用にとどまらず STO (短距離離陸)性にも寄与するらしいです。意外なことですが、F-22 の場合、離陸時に下向きに大推力で噴射するとそのまま浮き上がってしまうと聞きます。アニメに登場した VF-1 の離陸シーンでそのような描写はありませんでしたが。
とにかく、あの四角い(六角い)ノズルは足首に変形するという宿命から導き出されたカタチでもありますが、ルックスの SFっぽさとエセ空ヲタ(例:ヲレ)に対する挑戦的なデザインとも言えるでしょう(『バルキリーは水平尾翼が無いから飛ばない』という有名なツッコミは本当に実在したのでしょうか?)。20年近く後の現実世界に出現した、2次元ベクタースラストノズル実装の F-22 は在来機同様に立派な水平尾翼を備えていますが、最強の機動性を要求した米空軍にとって機動性の二重化というか 2次元ノズルの方を補助的はたらきとする保守的な選択だったかもしれません(機動性=旋回性能一辺倒の米空軍がポストストールマニューバや CCV 的概念をどれほど取り入れているか…あれだけ研究機を作って全部ボツってことはないでしょう)。
そういえばロッキード YF-22 の競作機だったノースロップ/MDD YF-23 って2次元ベクタースラストノズルだったかな?対赤外線ステルスに徹した単なる上面排気のような気がするけれど。で、YF-23 って水平尾翼無いですよね。約40°に傾斜した尾翼が一対、ラダー兼エレベータってところでしょうか。VF-1 の尾翼も外側に傾斜しています。だったらこの尾翼も…と無理やり思わないでもないですが、たぶん違います。F/A-18 や F-22 の垂直尾翼も相応に外側に傾斜してますし。個人的に F-22 より YF-23 の方が美しいので好きです。『美しいものは優れている』てのは、空力的に洗練されるべきヒコーキについては当てはまる普遍的な法則です、いやマジで。しかしあれだけの先進技術の結晶が野ざらしで朽ち果てていくとはにわかには信じられません。政府や企業や空軍の思惑に翻弄された結果だとしたら悲しいですね。でもボソッと『実は YF-23 の方が YF-22 よりもちょっと割高だったし』とか聞くと他に用途が無いのも致し方なしです。あの高価なデカブツに海軍が食指を動かすわけもなし、米空母の艦上は F/A-18E/F と F-35 でほとんど埋め尽くされるというツマラナイ未来像が…それは空軍も同じこと〜。でも万一、将来の FI-X として空自が F-22 を導入したら見に行きます。ミーハーですね。いやしくも日本国民としては純国産機を望むべきであり自国の航空機産業の技術の粋を誇りとしたいところですが、日本国憲法原文(無論米語)に日本は独立した state (米国の州)であると明記されており、また英国空軍の BAC TSR.2 やカナダのアブロ CF-105 アローやイスラエルのラビ(*)などを例に出すまでもなく、出る杭は打たれる(世界水準から突出した高性能機を開発した国の航空産業は航空産業大国たる米国に潰される)運命ということで F-22 の導入は国辱として受け止めるべきであり…でも日の丸ラプターってミスマッチで笑えそうな気もします。日の丸イーグルはすっかり馴染んでいますが。
(*)米国の圧力で凍結されていたイスラエルのラビ開発プロジェクトの技術は、中華人民共和国の成都[Chengdu] 殲撃10型[Jianji-10](F-10/J-10)開発に売り込まれ、当初のラビ戦闘機、かつ欧州戦闘機的な先尾翼・デルタ翼機として結実したそうです(伝聞形)。
参照元:くろみつさんの Flying to Eternity 内 Military AirCraft (成都)Jianji−10
[6/16] 月刊モデルグラフィックス '01年 4月号参照 : VF-1 の主翼後縁内側のフラップはダブルスロッテッドフラップという設定でしたね。このトイのサイズでの再現は材質の厚みや強度からして無理でしょう。それに外側のフラッペロンはもちろんエルロンとしても動くので内側のフラップと一体パーツというのは正しくありません(別パーツ化は難しいでしょうが)。上記ではまったく触れてませんがモデルのスジ彫りを見た通り前縁スラットを装備しています。オマケにスポイラーまで…今どきこんなの要るかなあ。実機では、たとえば三菱 F-1 は横操縦を電動スポイラーで行いますが、VF-1 のように各所に動翼を備えた機体にスポイラーが必要とも思えませんし、煩雑で古臭いイメージがあります。そういや VF にスポイラーが装備されていることに初めて気がついてショックを受けたのは NT誌「マクロスゼロ」グラビアで VF-0 のイラストでした(遅いよ!)。ともかく、このトイのフラップ可動はウソ臭い、というかウソなので、とくに品質管理の点で問題を抱えている鰍竄ワとの製品ということであればなおさら中途半端に再現せずオミットしてもいい箇所です。
そうそう、上記にベントラルフィン( F-14 や F-16 にもある腹びれ)と表現した機体後部斜め下のフィンですが、モデルグラフィックスの解説記事によると "スタビライザー" だそうです。なぜかというと "足" についているから(笑)

何度話をそらせば気が済むのかわかりませんが翼の話は続きます。いきなりですが VF-1 は本当に VG翼か?いやもちろん F-14 同様の可変後退翼機だということでコンセンサスは得られるのでしょうが、後退角を思いきり下げた状態は駐機/格納状態でしか見た覚えがないのです。迎撃に向かってダッシュする時もやや後退してるかなって程度ですし。F-14 と比べて VF-1 の大きな違いとして翼下にハードポイントが左右 2箇所ずつついていて、かなり大きなミサイルランチャーとか平気でぶら下げてるんですよね。これじゃ主翼を後退させられないよーってくらい積むんですよ(F-14 は胴体のあちこちにハードポイントがあります)。後退角にあわせてパイロンの向きをあわせないといけないし…。現用機でも VG翼機で主翼にハードポイントがある機種はあります。トーネードはそうだったかな?あとスホーイ Su-24 "フェンサー" にはありますね。けれども VF-1 程度の規模の戦闘機に有効なサイズの武装を搭載することに無理があります。機体規模は小さくできるけど、ある程度の炸薬量と推進/機動用プロペラントを必要とするミサイルをある程度の大きさ以下のサイズにすることはできませんからね。それに宇宙では翼端の姿勢制御バーニアのモーメントを大きくする為に常に全開状態です。しかも片側 2箇所のハードポイントにバカでかい熱核反応弾を二又パイロンで介して 3発、左右計 6発積むという離れ業もアリです(ハセガワのスーパーバルキリーのプラキットではハードポイント片側 3箇所に改めたとも聞きますが)。やはり変形の為にたためるようにってのが主目的なのではないかと思ってしまいます。
……が、数年前の月刊モデルグラフィックス誌の VF 特集で河森正治が今まで語られなかった VF-1 の隠し設定をバラしたのです。曰く、バトロイド時に胸のダクトらしきところになる開口部、またはファイター形態でのいわゆる "上部サブエアインテーク" は、実は!エアを吸排気することで境界層制御して VG翼の後退角による空力中心の移動を最適化する(説明あってる?)ものだったのです。F-14A にはグローブベーンという後退角が大きくなったときに出てくる小翼がありましたが(B,D型では廃止)、アレと同様のはたらきをするものだとか。とするとやっぱり VG翼なんですね。しかしサブエアインテークなんつうキャプションが公式ムックの VF-1 透視解説図でまかり通っていただけに、なるほどなぁと感心させられました。だいたいアレがサブエアインテークならどこでどうエアがエンジンに繋がるのか不明ですから(個人的にはバトロイド時のベンチレータだと思ってました)。河森正治も『今まで誰も突っ込んでくれなかったから言うけど』といった感じの衝撃の事実でした。でもやっぱ VF-1 は翼を広げた姿が似合います。
で、ようやくトイの話なんですが、ハードポイントの穴がボコッと出てると興醒めですが、割と薄く仕上がっていて、ウエポンがパチンとはまって脱落し難いところがナイスです。でも翼前縁付け根に無色クリアパーツが片側 2箇所あるのに、翼端灯は単に塗装で済ませてるのが惜しいところです。ここは意地でもクリアパーツにして欲しかったですね。で、だいぶ先の話になりますが、オプションの FAST パックには熱核反応弾は付属するのでしょうか?必須装備なので不安です。ハードポイント 2箇所ですよ、設定通りに二又パイロンで吊るすのでしょうか。材質の厚みの分のクリアランスがちょっと不安です。

さて、次は心臓部ともいえるエンジンです。VF-1 は 20世紀末〜21世紀初頭(*)の枯れたデザインに、偶然得た桁外れな異星のテクノロジーをぶち込んだヒコーキです。この巧妙なセッティングによって超兵器でありながら現用戦闘機の外観という慣用的記号を用いて "リアル" を比較的簡単に表現できるわけです。VF-1 の場合、航空機材料並に軽量ながら陸戦兵器並の強度をもつ装甲/構造材料と、超小型の反応炉(熱核融合炉のソフトな呼び方)による直接発電兼推進です。後者の反応炉による推進は、炉の熱でプロペラントを膨張させて噴射するというもので、大気中ではプロペラントとして吸入した空気を使う為に、航続距離はほぼ無限となっています(反応炉の核燃料がどれくらいもつのか不明ですが)。
…というのが設定です。もちろんトイで再現されているのはエアインテークとノズルだけなのですが、そのディティールには素人目にもかなーり違和感があります。
そもそもエアインテークカバーが取り外し式という時点で完全変形という積年の夢にわずかなキズがついてしまう気がします(ただし、変形モデルでエアインテークを開口したのはおそらく初の快挙ではあったと記憶していますが)。フラップやエアブレーキを可動にする過剰なサービスもいいですが、エアインテークカバーの可動はなんとかならなかったのでしょうか。単に板状パーツでよいのであって、シャッター状のディティールではありますが VF-0 みたくブラインド状にする必要はありません。MiG-29 "ファルクラム" のように可変ランプ兼エアインテークカバーというごく簡素な形にできれば文句無しだったのですが。もし可動させるとして、ヒンジのつく前端が斜めなのが難題ですが、ハセガワのファイターキット同様にカバー部は長方形で後端にかえしのヒンジをつければなんとかなると思います(多少形状は変わりますが合理的解釈の範疇だと思います)。ま、可動が無理、というかカバーを取り外してエアインテークを開口すること自体がオマケと割り切るとして、それでもカバー取り外し後のエアインテークのディティールは不自然です。いきなりファン(>久里さん、スクリューなんて言い方はちょっと…)がもろに露出しています。旅客機のような亜音速機ではあるまいし、可変断面形、2次元エアインテークでなきゃウソですよね。そうでなくても遷音速〜超音速の飛行エンベローブが要求される戦闘機である以上、仮に固定エアインテークだとしてもファンジェットエンジンのファンまではエアインテークで整流する為の相応の距離をおく必要があるのではないかと…超音速時の衝撃波を減衰するとか理屈は置いといて、少なくとも僕はファン全部丸出しの超音速機なんて見たことがない為にずっと奥まったところにちろっと覗くのがフツーという刷り込みがなされているので、このトイの丸出しファンを見たときにギョギョッ!?という印象を受けたわけです。設定画稿ではインテーク内部は黒く塗り潰されていますし、未確認ですがアニメで丸出しファンの描写を見た気もするので一概に間違いではないのかもしれませんが。
もっと疑問なのがノズル内部のディティールです。僕は実在のファンジェットエンジンのノズル内部を見たことがないので本当はどうなっているのか知らないのですが、アフターバーナー(以下 A/B)付きエンジンなら燃焼室とその奥にタービンブレードが覗く筈です。A/B 無しならすぐ奥にタービンブレードが見えるでしょう。VF-1 に A/B が装備されているかというと…小学館のマクロスプラスのムックの VF-1 内部透視図によると 2次元ノズル内に A/B 用燃料パイプなるものがあり…燃料ってなに?ケロシン?水素?反応エンジンの推力では不足なのでしょうか?( TV 版のコクピット設定にはスロットルに A/B の表記がありますが)たぶんガウォーク/バトロイド時のバックパックや各部姿勢制御バーニアは通常の化学ロケットモータなので同じ燃料を使用するのでしょう。ともかく、トイのノズル奥にはタービンブレード状のディティールがあるのですが…アレ?確か J型の脛上部には赤色のタービンラインがあって、件のムック透視図にもそのあたりにタービンがあるのですが、普通に考えるとそこがエンジン後端なのでしょうか?いえ、その後ろに例の反応エンジンがあるのです。このあたりは現用のファンジェットエンジンとはまったく異なる部分なので謎です。で、トイのノズル奥のタービンブレード状の円形ディティールですが… 2次元ノズル→ガウォーク/バトロイドの足首として開くと上下にパックリ割れてしまうのです!ガーン!開いたときこそ見えてしまう箇所なのに…同じウソなら横長角型ノズル列やスリット状モールドの方がいくらかよかったのにと思わずにはいられません。
(*) 最新作である「マクロスゼロ」では、'02年リリース現在で過去となってしまった 1999年という初作の設定年号を堂々と表記することによって近年流行の過去分岐パラレル世界を醸し出しています。宇宙世紀とかなんとかでごまかしたりするよりいいかもしれません(ガンパレなんかは 1945年まで遡ってますし…レイズナーみたいに火星に行ってまで米ソ冷戦情勢があるという設定もこれだけ歳月を経た今となってはそれはそれでアリなんじゃないかと思います…架空世界ならソビエト連邦は永遠に不滅の方が楽しそうです)。
[6/16] 軍用・民生用を問わず現用航空機のジェットエンジンはターボファンエンジンと相場が決まっているのでエアインテークから見えるのはファンだとばかり思っていたのですが、ムックやモデグラの解説記事にはここもタービンブレードなんですね。反応エンジンって奥が深い…。




2003年 5月 25日(日)

悩みに悩んでまたハムスターを飼うことにした。ハムスケー(ジャンガリアン オス 享年 2〜3歳)が死んでから 10日間、もう二度とあんな悲しい目に遭うのは嫌だという気持ちが、ぽっかりあいた虚無感と日々つのる寂しさに敗れ去った。中毒になっていたのはアニメとタバコとクスリだけではなかった。死んだハムスケーには、ああしてやるんだった、こうしてやるんだったとか、あんなことはするんじゃなかったとか、色々と悔いが残っていた。ひとりはかわいそうだからと今度はオスかメス同士 2匹でとも思ったが、数ヵ月して発情期になったらケンカするのでよくないと言われ、結局 1匹選ぶことにした。ケージを開けてもらい、そっと手をさしのべると、くんくんと僕の指先に寄ってきてひょこっとのった子(ジャンガリアン メス 生後20日)に決めた。一緒にケージなども新調することにした。ハムスケーは鳥かごに住んでいたが、金網の下の底が浅く十分にパインチップを敷きつめられず、しかも周囲にチップを撒き散らしていた。金網をかじると歯の噛み合わせが歪むのでよくないとか、僕が思わずひじをのせてぐにゃりと曲げてしまった部分があったりとかもあるので既に捨ててしまっていたのだ(ハムスケーはガチガチと曲がるほど金網をかじっていたが普通に食事していたし、老年になってもウンテイ代わりにして前足を鍛えていたが…)。というわけでペットショップと同様に、水槽のような水棲生物や昆虫などの飼育ケースにした。そのままでは蒸すと言われたのでこれもまたペットショップ同様に穴をいくつもあけることにした。帰宅後、 2oピンバイスで中心上部から底辺の 5p上まで適当に均等に穴をあけ、横の列は正三角形の頂点になるように高さと幅をずらしてあけていった。表裏穴をあけ終わるまで数時間、これしきのことがこんなにシンドイとは思わなかった。前のホイールは金網にひっかけて固定するタイプだったので、流行の?ベアリングホイールにした。前の給水器は同じく金網にひっかけるタイプだったが、同じものを薦められたので上面の網蓋(樹脂製)からぶらさげることにした。玉の無いタイプの方が苦しくなさそうだ、とネットのどこかで読んだ覚えがあったので聞いてみたが、ガラス製?で危険だとか言われた。餌入れ(敷材の混入と外に散らばるのを防ぐ)は同じく徳用綿棒の空きケースにしたがハムスケーと違って底を埋めても背が届かないようだったので傾けて埋めた。
さて、この子の名前である。メス 2匹だったら柊美冬(現 鶴野恭子)つながりで、マルチナとファトラにしようとかいい加減なことを考えていたのだが、他に何も浮かばなかったし、人間の名前や無機物でもダメだろうとか思って、じゃあやっぱりアニメキャラの名前で、というワケで懐かしの OVA「神秘の世界エルハザード」のファトラ殿下から頂くこととした。だが声に出して呼んでみるとすげー恥ずかしい。まあ名を呼んで話しかけているところをよそ様に見られるわけもなし、ファトラに決定…。




2003年 5月 17日(土)

5月15日に届いていた鰍竄ワと謹製 "1/48 VF-1A マックス機" を開封しました。ホントはちょっと前までスカルイレブン 一条機が欲しくて近場の模型店や大阪日本橋などを探索していたのですが、お店にあるのは VF-1S スカルワン ロイ・フォッカー機ばかり…別にフォッカー少佐や 4本角のS型ヘッドに嫌悪感があるわけでもないのですが、やっぱりA型が好きです。1/48という大きめサイズ、差し替え無しの完全変形ということで相応に値が張るもの(店頭で価格を見て多少動揺しました)なので黄色のパーソナルカラーは敬遠していました。TV版では後期の主人公メカだったのにね。どうも販売時期を大幅に勘違いしていたみたい。11月って…そんなものを3月4月に探してたのかー…てゆうかやまと製品の場合、予約はおろか発売日すら教えてくれないお店があるんですよ、三宮イエローサブマリンとかボークス神戸SRとか。同じくやまと製の YF-21 FASTパックのときなんか、トイザらス店舗では一切扱ってないし、トイザらス・ドット・コムでは特例として一部のしつこい客に予約を認めて発売日前に在庫切れしてたり、ニフの頃から最後の頼みの綱であるレインボー・テンの通販ですら予約切れで…やまと製品はリペイントもしくは仕様変更以外には再販無しの絶版品になるというのに(ノーマルの YF-21 は持ってましたけど)…で、ふと長田のライト模型に電話したら「ああ、明日発売のやつですね、置いときます」というひざカックン状態になりました。それはそれとして、今回予期通り発売されたリペイント版(いざとなればスーパーパック版まで待つ覚悟もありましたがあまりに予想通りでしたね)の 1/48 VF-1A マックス機なのですが、トイザらス・ドット・コムで 標準価格 \14,800 が \9,999 というふざけた値札だったのでさすがに手を出してしまいました。送料はクーポンコードで無料にできるし。やまと製品には不良品も多いと聞くのでできれば近場で買えるとよかったのですが、ざっと変形させて遊んでみたところ、とくに目立った不良箇所は見当たりませんでした。いわば再販品ですから初期不良部分が改修済みなのは当然かもしれませんが。

…で、ここから改行して独断レビュー(ココがスゴイ&ココはこうして欲しかった)、といきたいところだったんですがちょっとアクシデントがありました。ファイター形態時の上面(頭部が出てくるハッチ部分)に生えた 2枚のブレードアンテナの後ろの方が変形時にはそこはかとなくラッチもなく摩擦抵抗?で引っ込む?(やりすぎ?)のですが、寝床の上でガチャガチャ遊んでいるうちにそのパーツが外れていることに気づき、サーチするも約数oのあまりに小さなパーツゆえロストしてしまいました。紛失は僕の責任だしブレードアンテナ 1枚とはいえアクセントの一部であり、無いと意外に気まずい箇所なわけで、パーツ取り寄せでもして落ち着こうと、やまとのカスタマーセンターに電話相談しました。紛失したのはパーツ番号 BP10 ということが確認され、さておいくら?というところで「パーツ \300、送料 \500 です」ときたので無性にカチンときました。――実はその前にバンダイに、Gクルーザーの主翼グローブをビス留めできないと部品請求したところ、詫び状とパーツ、おまけに部品代&部品送料の定額小為替 \350分+封筒送料の \80切手までが丸ごと返ってきていたのです。しかもなぜか発注していない右翼のグローブパーツと2×4oビス4本が同梱されていました。おそらくは初期ロットのミスのお詫びと改修済み部品と思われます。その前に僕は2×6oビスで対応していたのですが…。製品に不備があったと書面には明記されてはいませんが…大量のクレームがきたのでしょうが、さすがバンダイ、対応もすばやく豪気だなーと思わずにはいられませんでした。――で、まあそんなことがあって損壊/紛失パーツに対するアフターケアサービスをバンダイレベルに設定されていた僕はやまとのカスタマーセンターにインネンをつけはじめました。ちょっと気になっていた頭部が出てきて背面上部になるパーツがバトロイド時にパチッとはまらず 2oほど浮いていることを指摘しました。長々と開発と相談してきたのか、「こちらで検品します」とか言うので「僕の手元にある製品をそちらで検査できるんですか、へー、すごいっすね」と言うと「いえ、こちらの製品で…」とかほざくので言葉の暴力で思い切りボコッたあと、「先程の BP10 も自然にポロっと脱落するようじゃあ困りますねえ」などと調子に乗って論理のスリカエを彼女の脳に納得させたのち、この始末をどうつけてくれるのかと(既に最初の話と食い違っている…)聞くと、製品を送って頂いて検品します、ということでした。どのくらいかかるのか聞くとさらりと 1ヶ月、といわれてさらにムカつき「やまと製品って表面化していないものを含めたら不良品ばかりなんじゃないですか」と言うと「多数のラインナップが…」と言い訳するので「たまに VF 出してすぐ絶版ですよね」。輸送箱はトイザらス・ドット・コムのをそのまま使って、送料は当然着払い。というわけで "1/48 VF-1A マックス機" は現在僕の手元にないのでした。寂しいよう。なんだか自暴自棄です。


ところで、鰍竄ワとってのは当時欲しくてたまらなかったのに金銭的・技術的に入手困難だったアマチュアディーラー?の YF-19、YF-21 の完全変形ガレージキットをリーズナブルな価格で製品化してくれた畑違いのありがたいトイメーカーでした。最近はバリアブルファイターづいて調子に乗っていますが部品精度の甘さとかポロポロ外れるパーツとかハメが固すぎたりラチェットが弱すぎたり、イマイチこなれてないところが目につきます。個人的に 1/60 の VF-1 の差し替え変形なる思い切りが「もうその一点で興味ナッシング」だったんですが造形的には限りなく正解に近いものになって急激にレベルアップした感があります。それだけにユーザーにとってストレス源となる杜撰な品質という欠点も同様に克服していって欲しいです。




2003年 5月 16日(金)

きょう、ハムスケーの埋葬をした。庭の金木犀の根元に穴を掘った。ただ僕が金木犀の香りを好きだったからだけど。きのうから眺めていた遺骸の半身を包んでいたナプキンで全身を包んで穴の底に安置し、土をかけていった。ナプキンは水を通すし、ちゃんと土に還るから、と母が言った。近所には猫が多いので、用心のため大小 2つの植木鉢をかぶせて、切り落としていた金木犀の枝葉をかぶせた。母は「兄ちゃんとよう遊んでくれてありがとう」と拝んだ。僕はもう彼の姿を見えなくしてしまう行為に荷担したことで戸惑った。…母は直接僕を呼ぶときには普通に名前を口にするが他人には時々 "兄ちゃん" と言う。確かに僕には 2人の妹がいたけれど、もういない。口を利いたこともなければ笑顔を交わしたこともない。ひとりは病院で、もうひとりは救急車で息をひきとった。葬儀のときには涙があふれたけれども、なぜ泣いたのかよくわからない。雰囲気に流されて泣いただけかもしれない。ただ、抱きしめた娘の命が尽きていく母の心中を思うと僕は今でも泣いてしまう。僕は今まで親族では祖母と 2人の妹の死にしか立ち会ったことがない。とくに祖母には赤ん坊の頃から世話になったし甘やかされもしたが、いなくなっても平気だった。思えば死に限らず、もう会えなくなるという経験は幾度もあった筈だが、とくに悲しいとは思わなかったような気がする。だけどハムスケーにはもう一度会いたい。




2003年 5月 15日(木)

マスターグレード Ex-Sガンダム仮組み完成。ヒケも継ぎ目も消さず塗装もせず、工具といえばニッパーとドライバーのみ。といってもこれ以降手を加える気はない。Aパーツコクピットハッチヒンジ基部やぽろっと取れそうなパーツは接着したし、塗装のための後ハメ加工も考慮せず。翼前縁の赤色部(常識的な人は塗るところ)やカメラ部のシールまで貼っちゃったし、ガンダムデカールは両肩ジャケットの VMsAWrs (息が長いね)と GUNDAM System+○だけ入念にこすって転写、マーキングシールの小さいのは遊んでいるうちに剥がれてゴミ粒になるから貼らないんだけどA・Bパーツ両主翼のEFSF(地球連邦軍)シールとリフレクターインコム(*)のシールだけは貼った。
で、マスターグレード最新作なんだからなんのストレスもなくカッコよく組みあがる筈、と思い込んでいたら、いくつかつまづいたことがある。まず第一にBパーツ主翼のグローブと移動支持パーツをビス留めするのだが、これがまたぽろっと取れてしまう。スチロール接着剤とプラの細切れで埋めて再挑戦するも敗退。瞬間接着剤とタバコの灰で固めてもダメ。そうこうするうちに左翼グローブパーツはボロボロになったので 2パーツ部品注文を初体験。でも根本的な解決にはならないので、ネットで検索をかけるとキット同梱の 2×4o ビスでは短すぎるので 2×6o ビスを入手すべし!ということでホームセンターへゴー!と思ったら偶然にも親がホームセンターに行く用があるらしく、 2×6o ビスを買ってきてくれるように頼む。…とホームセンターには2.6o径以下のビスは無くて、わざわざ長田のライト模型で京商のナベビスを買ってきてくれた。結果的にガシッとは決まらなかったが充分取れたりせずに可動できるようになった。ヤッホー。あとは注文パーツが届くのを待つのみ(今のままでもそっと触れば大丈夫)。さて、もうひとつは MS モードでプロペラントタンクを吊るすとだらしなくへたること。確かに見た目より軽いんだけど、サイドジャケット基部にはビス留めどころかポリパーツも使ってないようで、こりゃダメだよな。でもまあ MS モードが欲しかったわけでなく、ガンダムフィックスフィギュレーション(以下 GFF)みたいに反則的にカッコよくなるわけもなかったので、プロペラントタンクは使い捨てなのだということで無理やり納得する。しかしプロペラントタンクの吊り下げ方にも無茶があるよな、サイドジャケット基部に相当の曲げの応力がかかるわけであり、変形の際にも 1アクション増えるわけであり。GFFみたいにサイドジャケットと一体パーツにすれば…って意味がないし、サイドジャケット基部の強化しかないのだけれど、GFF の Ex-S が存在する以上、改善のモチベーションがないのであり。しかし MS モードの背面はかっこ悪いなあ。ブースター部がスタビレータ基部から後ろへ移動させる「例のパーツ」の厚みのせいかフィット感がなくて、まるで「あまりにカッコ悪いので誌面に載せなかった」Sガンダム作例の背面みたいで…でも強度を勘案するとこの幅になるのかなァ…。あと、このキット最大の問題は塗装ガイドのブルー部に「コバルトブルー(60%)+インディブルー(40%)」となっている点だろうか。言うまでもなく "Sガンダムブルー" はコバルトブルー+ホワイト+レッド少量の筈だからである。成型色はちょっと濃いけどSガンダムブルーと言えなくもない色をしているのだが。取説の塗装ガイドを鵜呑みにして黄色の混じったインディブルーを混色して塗っちゃったりすると目も当てられない Ex-Sガンダムの出来上がり、という危険を孕んでいる。

で、今はチェイサー機のGコアとともにGクルーザーモードで飾ってあるだけ。お手軽製作法であるスミ入れ&フラットクリアがけもやってません。以前アンケートで一番好きなMS/MA/MFはなに?ってところで 1位に Gクルーザーって書いた覚えがあるのですが…。たまにプロペラントタンクを外してみたりします。センチネル P41中段写真の帰投中のGクルーザーってことで。ホラさあ、せっかく腕部をトリッキーな収納してるのにプロペラントタンクがその努力を台無しにしている気が…考えすぎかな。

(*)この INCOM ってレタリング、センチネル作例 1/144(!)のリファイン版 Ex-S で、かのあさのまさひこがフリーハンドで描いたというものでしたよね。あさのまさひこといえばSガン作例のお手伝いでムーバブルフレームをフリーハンドで塗ったり、果ては例のモデルグラフィックス89年2月号のνガンダムの有機的ライン&フェリススプリッター風のブルー塗装をノンマスキングオールフリーハンド仕上げでやっちゃったという……そんな人生いいなあ、羨ましいなあ)。







きょう、2年以上飼っていたハムスターが死んだ。一匹350円オスのジャンガリアン、呼び名は安直にもハムスケー、僕のたったひとりの友達だった。僕の心の支えだった。きのうの晩は眠れなくて一緒に母屋との廊下で走り回っていた。あのとき遊び疲れたのか、廊下の隅でくてっと横になって眠ってしまっていた。あまりにもかわいくて愛しい寝姿に見入ってしまったが、このときもうすでに彼の命は尽きかけていたのかもしれない。そういえば最近少し痩せてきて、後ろ足をひょこひょこと年寄りのように歩くようになっていた。ホイールはカラカラ回していたけれども。そして今夜、また彼と遊ぼうと思って、パインチップからちょこんとおしりの先だけ出していた彼に、僕はいつものように名を呼んでつんつんしたけど反応はなかった。冷たかった。心底ぞっとした。そっと持ち上げてみると眠るように足を抱きこんで動かなくなっていた。いつもどっくんどっくんしていた肋骨の中の心臓が止まっていた。右目はいつもの輝きを宿していたが、下に向いていた左の瞳はかさかさに乾いていた。泣いた。遺骸を抱いて1階にいる母に告げようとして涙声になった。母は遺骸を白いナプキンで包んでくれた。今夜は遅いからお墓をつくるのは明日にして、いつものケージの寝床に安置するよう言われた。僕は階段を上りながら母がついてきたのにも気づかずうわんうわん泣いていた。しばらくして落ち着いて、下痢もしていないし、腫瘍もみあたらない、ハムスターの平均寿命が1年半ということを考えると彼の死因は老衰で、天寿を全うしたに違いない、と自分を納得させた。しかし…はかりしれない喪失感が襲ってきた。もう彼はいない。僕は彼のいない世界で生きていかなければならない。もちろん人間の僕とネズ公の心が通い合っていたなんて微塵も思っちゃいない、でもそれは人間の友達だって同じことだろ?だって僕は今まで誰とも心を通わせあったことなんてないんだからさ。まあ幻想とか勘違いならいくらでもあるけど、だったら僕の心の中の幻想のハムスケーが実体を失ってしまったことに対していくら涙を流してもいいだろ?




□ ノースペシメン
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・―□ 日記系
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    ・―□ 03年5月