□ ノースペシメン
|
・―□ 日記系
    |
    ・―□ 03年8月


(注) ここ日記系は単なる千歳旅行記です。
航空祭の内容につきましては下記↓
航空系 / 2003 航空自衛隊千歳基地 航空祭 をご覧ください。

2003年 8月10日(日)

始まりの夏:
それは 1ヶ月以上前の 7月初めに遡る。なにを思ったか『死ぬ前にいっぺんくらい自衛隊基地見物に行ってホンモノの戦闘機が見たいなあ…』と口走ったのがすべての始まりだ。『ほな行ったらええやん』と言うに『近畿地方にそんな基地は無いし、たいていは辺鄙なところにあるからクルマでもないと行くのは大変なの!それに旅費も無いの!』と言うと『じゃあ旅行計画立てなさい。そしたら行かせたろ』などと言ってくれたので僕のバーチャル旅行は始まった。空自サイトを参照し 1ヶ月ちょっと先に航空祭がある千歳基地あたりを仮想してみる。民間の新千歳空港と空自飛行場が隣接しており現地交通アクセスはよさげである。(旅客機だが)ヒコーキに乗れるというのも大きな特典である。東芝EMIの「 AIR BASE CHITOSE 」は AB シリーズ中屈指の出来である。織田有事主演の映画「ベスト・ガイ」の舞台でもある(カンケーねえよ)。ともかくそういうわけで、なんとなく近畿日本ツーリストに相談してみる。航空機チケットは特定便の予約を 1ヶ月前には取っておくべきということで新幹線みたいにルーズな乗り方はできないようである。とりあえずパンフとパンフには載ってない千歳近辺のホテルの宿泊費見積りを送ってもらうことにして、あとはネット(と一部電話)で調べられる資料はすべて用意しておくことにした。意気込みを見せる為と、仮想が現実となったとき困らないようにである。

電網収集:
まず出発空港は国内便数と、なにより近場であることから大阪(伊丹)空港に決定。どこなびで 神戸(三宮)発 伊丹空港行きバス時刻表と、ついでに復路の伊丹空港発 神戸(三宮)行きバス時刻表を検索・印刷。
同じくどこなびで 8月9日の大阪(伊丹)〔ITM〕― 札幌(新千歳)〔CTS〕往復ダイヤを検索・印刷。旅行代理店パンフの時刻表はアバウトな時間しか載っていなかったりする。ま、日によって変わるのかもしれないけど。
さて、宿泊所選定用の地図情報をまじまじと眺める。旅行代理店からの選択肢は 3つ。千歳全日空ホテル、エアポートホテル、ホテル日航千歳。料金は大差なし。千歳市街地、JR千歳駅に近いのは前者の 2つだが、この際関係なし。地図上では千歳基地のすぐそばにホテル日航千歳がある。千歳基地の人に聞いてみると『ああ、2空団(にくうだん)のゲートの目の前ですよー』ということで宿泊はホテル日航千歳に内定した。
宿が決まれば新千歳空港からのアクセスだが、ホテル日航千歳のシャトルバスは朝と晩にしか無い。まあ、フツーは晩にチェックインして朝にチェックアウトするのだろうが、僕は昼過ぎにチェックインして翌朝は新千歳空港ではなく千歳基地に歩いていくのでシャトルバスは利用できないのだ。が、ホテルの正面には(北海道)中央バス千歳ターミナルがあって新千歳空港との往復便があるらしい。一応どこなびで往復時刻表を検索・印刷。見知らぬ土地での路線バス利用はちょっと不安だがいざとなればタクシーでも拾えるだろう。
といった具合に交通と宿泊に関しては資料とおおよその目途はついた。あ、そうそう、千歳基地に航空祭の時間を聞いてたのだが『一応 8時から入場ということになってますがクルマが混んでくると 7時過ぎにはゲートオープンしますね。開催時間は午前 9時から午後 3時までです』ということで前泊一泊のみでオッケー。

現実化の仮想旅行:
ここらへんまではバーチャル旅行なのだが 1ヶ月前が近づいてくると急かされるように航空機チケット・宿泊諸々の予約/入金の為にリアルワールドの近畿日本ツーリスト三宮店へのクルマで踏み込むことになる。ガブガブと抗鬱剤を飲み下すと普段はビクビク日陰で暮らしている僕でも "積極的な普通人" のフリができる気がしてくる。『いいのか?マジで北海道行くのかよ?え、ウソ、マジ?コワイよ』とか微かに背を汗ばんで、それでも表向きはプログラミングされた積極性によっててきぱきと予約の確認をしていく。往路 8月9日には 9:10までに空港に着くとホテルのレストランで通用するクーポン券がもらえるらしい。食事はカロリーメイト(缶)を持参するのでべつにいいやと思ったけど一応早目の行動をとることにした。

撮影の要否:
帰りにがせいでんで買い物をするのでその間 DV カメラを物色。自分の PC に取り込み/編集装備があるので無性に欲しくなって延々といじり倒す。無論買う金はまったくない。しぶしぶ店を出て『レンタルのビデオカメラってないかなぁ』とこぼすと、は『ヒコーキの LD や DVD やったら何枚もあるやん。それよりせっかく実物が見れるんやからしっかり自分の目で見てきなさい』とたしなめられた。なるほど説得力がある。ずっとファインダーを覗いているだけならデキの悪いビデオを見ているようなもので、体験とは言い難いのも確かである。もちろん人前に出せるような絵を撮る腕があるなら別だが、僕はズブの素人の中でもヘタクソな部類に入る。ブレずにカメラを保持する握力、広い視野、瞬時の判断力や経験値など、いずれにも適性がない。昔使っていた 200oレンズの銀塩カメラも持っていこうか迷っていたけど重いだけなのでやめた。結局ズームレンズも無い古いデジタルスチルカメラ(下取り価格 500円)だけをメモ替わりに携帯することに決めた。で、ジョーシン三宮でそのデジカメ用に安売りの 128MB CFメモリを購入。SUPERFINE(1152×872 24b)モードで 320枚以上撮れる(大きすぎたかも)。古いデジカメは転送時間が異様に長くて連写できないのが難点だが飛行展示などを撮るつもりはないからこれでいいのだ。CFメモリは PCカードアダプタで簡単に PC に転送できる。なにより身の丈にあっているカメラでいいと思う。ホントは光学望遠と簡便な露出補整機能くらい欲しいけど。


[ 行動計画表 ] 2003年7月9日作成
____________________________________8月9日(土)▼
■クルマ(約20分)
7:40 自宅発 → 8:00頃 三宮着
■伊丹空港行きバス(約40分)
8:20 三宮発 → 9:00 伊丹空港着
■全日空773便(約1時間50分)
9:55 伊丹空港発 → 11:45 新千歳空港着
■タクシー(約8分)
12:00 新千歳空港発 → 12:08 ホテル日航千歳着
12:10頃 ホテル日航千歳 チェックイン
12:30頃 〜 21:00 昼食 ゲート下見 入浴 夕食 就寝
____________________________________8月10日(日)▼
6:00 〜 7:00 起床 洗顔 着替え 荷物整理 朝食
7:10頃 ホテル日航千歳 チェックアウト
■徒歩(約10分)
7:15頃 ホテル日航千歳発 → 7:25頃 基地ゲート着
7:30頃 〜 8:00頃 ゲートオープン待ち・入場
8:00 〜 15:00 航空自衛隊千歳基地航空祭
■タクシー(約8分)
15:30 千歳基地近辺発 → 15:38 新千歳空港着
■全日空778便(約1時間50分)
17:05 新千歳空港発 → 18:55 伊丹空港着
■三宮行きバス(南ターミナル発:約45分)
19:10 伊丹空港発 → 19:55 三宮着
■クルマ(約20分)
20:00頃 三宮発 → 20:20頃 自宅着
____________________________________________


鬱々気分:
もう後戻りができないところまでくると胸がどっくんどっくんする。ビクビクとワクワクが釣り合いながら脱力して無気力になったり自暴自棄になったりしているとに『じゃあ旅行は楽しみじゃないの?』と聞かれる。僕は『家族や学校や元友人たちに付き合って行ったどの旅行よりも楽しみだ。自分が行きたかったところに初めて行けるのだから今までのすべての旅行などとは比較にならないほど楽しくなる筈だ』と答える。僕は、自分の楽しみを誰とも分かち合えない。元々そういう半端な種類の人間なのだ。何処に行こうがそれは変わらない。任務に誇りを持つ自衛官とも偏執的なヒコーキマニアともじゃれあう家族連れとも空虚なお祭り騒ぎとも違う。僕は永遠にひとりぼっちだ。これまではなぜか、ひとりぼっちにならないようにある程度言動を律してきたが、もはやなにも恐れるものは無い。他人の迷惑になって関わり合いになるようなことはしないし、行列の暇潰しに初対面の人間と他愛もない話もするし、自衛隊員には比較的ディープな質問もするだろう。そうやって相手の顔も憶えていない、刹那的で、妙な縁をつくらない、人を人とも思わない生き方が僕にはお似合いなのだ。


閑話休題:
講師への義理で完成させることになった課題の作画担当者が弱音ばかり吐くのでやさしくなだめておいた。彼女の将来のことを考えればもっと厳しい言葉をかけるべきだったのかもしれないが、僕は彼女の講師でもなければ同志でもない。おかげで自分の作品が完成しないのは業腹だが『やむを得ない事情』でもあるし、すべて僕の責任ということにしておけばいい。僕は『仕上げがめんどくさい』という『やむを得ない事情』があるのでべつにいいや、と考えている。僕はなんでも中途半端に投げ出してしまうのが習慣になっているから。


台風10号襲来:
とかなんとか敗戦処理をしているうちに出発の週末、8月9日(土)が目前に迫ってきたウィークデイ、日本列島全土を縦断すると予想される台風10号が上陸した。最大風速40m/s、方舟が鳴動(*)するほどの暴風である。地区によっては瞬間最大風速 61.1m/s を記録したとか。8月7日(木)の進路予測によれば、まさに航空祭当日の 8月10日(日)の午前 9時には北海道全土が暴風圏となっている。フツーの神経で考えれば絶望的である。こんなことで気を揉むよりはいっそキャンセル(料金50%バック) してしまおうと決意表明したけど、出発当日の 8月9日(土)には近畿圏に達する為に出発便が欠航(料金全額バック)する可能性もあり、なんとなく進路情報を眺めていると台風10号が加速しているようにも感じられ、8月10日(日)の朝には千歳を抜けるように思えてきた。もういっそ小雨まじりの航空祭でもいいや、つーか諦観のあまりコバルトブルー気味の青いレインコート(フード前端が透明のヤツ)を購入。少なくとも 8月9日(土)未明の情報では、8月10日(日)午前 3時に北海道太平洋側に達することがわかった。すると逆に、出発日の 8月9日(土) 朝には大阪(伊丹)空港は台風10号のド真ん中であり、欠航の方が心配になってきた…が、ANA のウェブサイトによれば最初の羽田便他数便のみが欠航で、新千歳行きに欠航は無かった。もはや出ない理由は無い。そういえば昼夜台風進路情報サイトの更新ばかり見ていてまったく寝ていないことに気づく…もう心も体もダルダル。備蓄していたリタリンにすがる。
(*) 「機動警察パトレイバー THE MOVIE 」を参照のこと。


服装は昨年つくった自作プリントTシャツで決まりである。僕は自分でどういう意味の言葉が書いてあるのかわからない、もしくは全面的に賛同し難い主張が書いてある服を平然と着る人間のセンスはかなり疑わしいと考えているからである。(なんだか族の人の特攻服に描かれるロゴにも通じるところがイタイけれども)

8月9日(土) 出発日:デンドロビウム Tシャツ(前面)
図案は設定資料画稿にライトグレイを塗ったもの。ロゴの英文はモデルグラフィックスの作例記事タイトルから引用している。
Earth Federal Space Force / Anaheim Electronics made
Prototype Strongpoint Defensive Mobile Fortress System
(地球連邦宇宙軍 / アナハイムエレクトロニクス社製
試作型 拠点 防衛用 機動 要塞 システム)
8月9日(土) 出発日:デンドロビウム Tシャツ(後面)
モデルグラフィックスの作例記事中の射尾卓弥氏デザインのデカール図案を加工したもの。シーマ様の名セリフでもある。
地雷原に AFV の道を開く為の "導爆策" なるロープ状爆弾が元ネタか?対 MS 用チェインマインならともかく、長くしなる筒状容器に詰められる炸薬量でムサイ級巡洋艦は沈まない気もするが、素晴らしく絵的に映えるのでチリバツオッケー。


8月10日(日) 航空祭当日:JASDF 801TTS Tシャツ(前面)
「青空少女隊」のジャケットから第9航空団第801練習飛行隊の部隊マークとロゴを取り込んで加工。航空自衛隊もアニメも大好きなのだから両者渾然一体でまったく良いのである。
8月10日(日) 航空祭当日:JASDF 801TTS Tシャツ(後面)
前側と同じく。背中はロゴのみ。アイロンシートが中途半端に余ったので。約 3%の自衛官の方々はご存知かもしれない。航空自衛隊全面協力アニメなんだからいいじゃないか。




そして、運命の出発当日……:
三宮までにクルマで送ってもらう。ここのところ自分の足でバスや電車に乗って出かけることはなくなった。月に 1、2度ヲタグッズを買うだけなんだけど、それすら自分の足ではできなくなってしまった。それほどの労力にみあうだけの価値を見出せないのかもしれない。僕はもうヲタですらないのかもしれない。僕は誰だろう?
空港行きリムジンバスは阪神高速を駆け抜けて伊丹空港に到着。予定通り 9:10前に 2,000円分のクーポン券を受け取る。搭乗手続きといわれてもサッパリなんのことやらと思っていたらチケットを券売機みたいな機械に挿入して希望座席位置を指定するらしい。窓際席は中央部にしか残っていなかったのでそこに決める。他になにかしておくべきことはないか聞くが、あとは搭乗口に向かうだけ。手荷物と、トレーに入れたウエストポーチとサイフは検査に回され、僕は金属探知機にひっかかる。あきらかにベルトの金属製バックルなのだが、一応ボディチェックを受けて通される。ザルといえばザルだが国内便だとこんなものか?そこそこ歩いたところにある 13番搭乗口付近には喫煙コーナーと自販機があり、ラッキーストライクとまろ茶120 で搭乗までしばしくつろぐ。……少し予定時刻より遅れて搭乗開始。自動改札機のような機械にチケットを通すと半券のような切れ端の搭乗券が出てくる。これって紅蘭の全自動もぎりくん?大神さん(*) 要らずといったところか。
(*) 「サクラ大戦」を参照のこと。

初めてのヒコーキ:
いい歳こいてヒコーキに乗るのは初めてだ。とてもワクワク。いにしえの B-747 というからもっとぼろっちいのをイメージしてたら、内装品、とくに化粧室なんかはスッキリした機能的なデザインだった。シートベルトの外し方や読書灯のつけ方がわからずに客室乗務員に聞きまくる。君は田舎者か。窓から主翼舵面がよく見える。一見スポイラー風に見えたのはアクセスハッチだろうか。動翼の動きが見えるだろうかと期待が高まる。と、後ろ向きにトーイングされていく。タキシングに入り、両翼計 4発のファンジェットエンジンが壁の向こうで爆音と金切り音を上げ、主翼下からゆらゆらと熱気が背後の景色を揺らす。主翼後縁内側からダブルスロッテッドフラップ(?)が展開する。タキシーウェイから滑走路に進入したのか、停止する。そして再び爆音が限界に達しビリビリと機内も震える。ゴウンと力強い加速度をシートに押しつけられた背中に感じる。ヒコーキは最も重い燃料満タン状態にある離陸の際に最大推力を要する(戦闘機動を除けば…)。それに離陸速度に短時間で達することができれば必要滑走路長を短くできる。窓から後方を見ると緑豊かな大地と街並みが傾きつつ、あっという間に遠のいていく。とくに揺れはなかったが、機内中央列席天井のバゲージケースがガタガタ揺れているのが別の意味で怖かった。しばらくしてシートベルトが解除となり、主翼後縁内側にダブルスロッテッドフラップ(?) がピタリと隙間無く元の一枚板のようにしまいこまれていくのが見事だった。ヒコーキというのはいろんなところが動くのである。その動翼を見ていて疑問なのは翼後縁外側のエルロンをほとんど動かさず、翼後縁中央部の折れ線のあたりの動翼が上下に小刻みに動いて横操縦を行っていることだった。常識的に考えれば高速時用のエルロンということになるのかもしれないが奇妙なカタチである。このとき手元にネット検索エンジンがないことで無性に飢餓感を感じた。家に帰ってからも興味を持ち続けているかどうか、まして憶えているかさえあやしいものだが。やがて窓の外は白い闇につつまれて時折主翼がうっすらと見え隠れするようになった。ただファンジェットエンジンの心地よい音と振動でうっとりと窓の外を見ていた。予想外に早く新千歳空港に近づいたらしく、シートベルトを着用し、着陸に備える…ゲームだと着陸が難しいんだよな、もし操縦してるのが僕だったら怖いな、かなりの高確率で全員死ぬな、とか思ったけど大丈夫。君には絶対操縦させないから。というわけでキュッと接地してピタリと止まった。もしや三点着地?マジ?まあ旅客機はあまり大きな迎え角をとって機体面をエアブレーキにしたりはしないだろうけれど。たぶん胴体の真ん中辺りにいたのでメインギアのショックだけ感じてノーズギアは軽く接地したのだろう。帰りは前の方の席にしようかなあ。
そうそう、ヒコーキの揺れってのは船舶のように揺り返しがなくて、ひらりひらりと揺れるような感じがして心地いい。ゲームのヒコーキを操縦しているときに感じる揺れに似ていて、なんだか思った通りの挙動をしているようでおかしかった。台風のただなかを飛んでいる筈なのに…いや、雲より上を飛んでいるんだから関係ないのかな。しかし、台風も去った筈の帰りのヒコーキでの揺れといったら…(後述)。

身分不相応なホテル:
新千歳空港を出たところでバス停を探してもよかったが、なにも思わず自然とタクシーに乗った。所要時間は半分、料金は10倍…ま、いっか。運転手のジジイは耳が遠くて声が小さく、僕もヒコーキで耳がおかしくなっていたので会話が全然かみ合わないこと甚だし。ホテルのそばの自衛隊基地のゲートを教えてくれと叫ぶと、ホテルの角を曲がりながら『あれが 2空団(にくうだん)ですよ。すぐそこです』と言うので振り向くとそれっぽいゲートがあった。しかし 2空団なんつー内部略称的なコトバが一般地元民に流通しているらしい。地元民なら航空自衛隊千歳基地のことは "基地" とか "自衛隊" とか呼ぶのが自然な気がしていたけれども。だいたい千歳基地に所在するのは 2空団、すなわち航空総隊 北部航空方面隊 第2航空団だけじゃなくて他にも部隊があるのに不公平だなぁ。というところでホテル日航千歳の玄関口に乗りつける。外は小雨模様だった。

フロントに行くと『いらっしゃいませ』…えーと…ゴソゴソと旅行代理店の宿泊クーポン券を出す。差し出されたいくつもの項目がある用紙に汚い字でサラサラ書いていると『結構ですよ』と遮られ『701号室でございます』とルームキーを渡される。単に本人照会の儀式だったのだろうか。是非昼食にとホテル内の各種レストランを勧められる…と、横から『お客様、お荷物をどうぞ』と言われたのでなにげにひとつきりのバッグを手渡すと、ポーター(ボーイ?)が台車に荷物を載せて待ち構えていた。『ご案内致します』という彼についていってエレベータに乗り、7階の部屋に通されて『お荷物こちらでよろしいですか』と荷物置きにバッグを据えられ、照明設備等の説明を受けると『では、ごゆっくり』…と、僕はひとり取り残された。ホテルなんだからとくに驚くようなサービスではないのだけれども、同じ価格帯で以前に僕が仕事でよく泊まった横浜や福岡のビジネスホテルでは考えられないことだったので多少面食らったのは確かである。都心に比べて土地や人件費が安いのか。ともかく部屋の検分を…ベッドはセミダブルで広々としている。ハメ殺しの窓は大きくて昼間はとても明るい…が、照明は玄関とユニットバス内の他には、微妙なフットライトと、ベッドサイドとデスクサイドの笠付き白熱球スタンドのみである。僕は寝るときも蛍光灯を全開にしているのでかなり頼りない気がするが、雰囲気優先というものかもしれない。わざわざ電球なんか使って電気代食うだけなのにな、と僕などは思ってしまうのだが。ユニットバスは僕の知る標準的なサイズよりひとまわり以上大きい。なにより特徴的なのが B1 はあろうかという巨大な鏡である。鏡といえばデスクの壁面にも B2 ほどの鏡があるし、玄関には充分な大きさの姿見がある。その後エレベータで自衛官のふたり連れを見かけたが、やはり民間のサラリーマン風情と違って隙が無くビシッとしている。土地柄、出張等で千歳基地を訪れる自衛官たちがこのホテルの上客なのだとしたら、これらの過剰な鏡類は服装に厳しい彼らの要求に応える為の設備なのかもしれない。

徘徊するカッパ男:
さて、なにより天候が気になるのでテレビをつける。千歳市は一応札幌近郊らしいのでテレビ東京系も映る。それよりこの日は土曜なので TBS 系の方が重要なのだが…それはまあ夕方のお楽しみ。で、NHK はしょっちゅう台風情報を流しているが通過後の被害状況ばかりで予想進路はほとんど出てこない。さすがに地元局だから北海道の天気予報はたびたび流れるが地名がわからん。近畿地方在住の僕でも関東地方や九州地方のお天気マップならすぐにわかる。北海道はなんとか支庁とかいう行政区分?で区分けされているらしいのだが本州人は都道府県単位でしか習っていないからわからない。いっそ北海道も県単位に行政区分つくって日本人みんなに義務教育で教え込ませればいいのにとか思う。あ、北海道では太平洋側はそのままだけど、"日本海側" とは言わずに "オホーツク海側" って言うのな。そうそう、天気だよ天気…どうも札幌近郊は "雨のちくもり" のままのようであり…朝まで雨が続くなら飛行展示はないんだろうなぁと思うと気が重くなる。
とくに意味は無いが持参したレインコート上下を着て外に出てみることにする。買ったばかりでどれくらいの動きやすさ、防水性、フードの視野があるかを確かめて慣れる為と、ゲートまでの道の確認の為である。奇妙な風体のままフロントにルームキーを預け、外を歩き回ってみるとゲートまで意外と距離があることがわかった。また、そこから航空祭に入場できることをゲートの人に確認した。ホテルへの帰り道は反対側の歩道を通って中央バス千歳ターミナルを訪ねて新千歳空港への行き方を確認しておいた。少し先にコンビニがあったのでなんとなく入ってなんとなく「ワールドタンクミュージアム」シリーズ 4 を 7両購入。そのままホテルに戻った。

[ 本日の WTM 4 の内訳 ]
90式戦車・冬季迷彩
74式戦車・単色迷彩
74式戦車・冬季迷彩
61式戦車・二色迷彩
61式戦車・ドロップ迷彩
60式自走無反動砲・冬季迷彩
60式自走無反動砲・二色迷彩

やたら冬季迷彩が多い気もするけど北海道だから?じゃ那覇基地近辺だとトロピカル迷彩が!?

遅すぎた昼食:
このホテルでしか使えない 1,000円分のクーポン券が 2枚あるので珍しく食事をする。ロビーラウンジ、バーの類は却下。つきあいで相手と同量飲むのはかつて守っていた礼儀だが、酒を飲むより楽しくて気持ちよくなる処方箋はいくらでもある。アルコールによる多幸感は同じだけの恐慌をもたらす。デスクの上にメニューらしき紙切れがある。日本料理…カニ…6,000円から8,000円…バカバカしいのでパス。中国料理もパス。レストラン ユーカラ(カラオケマシンみたいな店名…)で洋食フェア…1,200円のオムライスに決定する。ビーフシチューがかかっていて、冷製ポテトスープがついている。オムライスの中身は定番のチキンライスでなく半熟タマゴ飯だったのでとくに味わうこともなく噛み砕いて飲み下す。ポテトスープもこの上なく不味かったので、両手でボウルを持って一気に飲み干す。200円ちょっとの出費にしては随分と燃料補給できたので部屋に戻り、持参したカロリーメイト コーヒー味を飲む。至極美味である。固形の飯など疲れるしめんどくさいのであまり摂取したくないが、もしかしたら美味いかもしれないという微かな希望にすがってしまう。たいていは裏切られるが。

早すぎた入浴:
これといってすることもないのでいきなり風呂に入る。学生時代のアパートのユニットバスには蛇口がひとつだったがここのは洗面用とバスタブ用のふたつがある。べつにひとつでもこと足りるんだけどな。バスタブ側の蛇口から盛大に湯を出す。ふとシャワーにはどうやって切り替えるんだろうと思ったら中央に shower と刻印された突起がある。左に回す、動かない、右に回す、動かない、押し込む、動かない…アレ?と僕はすぐにギブアップしてフロントにお願いする。ボーイさんがやってきて僕と同じように格闘している…僕は『左右に回してもダメ、押しても引いても…ッ!』はたと僕が手を打つと、ボーイさんが出てきて『引っ張るみたいですね』ということでした。やれやれ。『それでは、ごゆっくり』とボーイさんは去っていった。ひとり暮らしの頃のユニットバスではバスタブに湯をはるなど皆無に近かったが、ホテルではいつも湯をドバドバ使う。適温になったので湯に体を沈めるが、面積は広いのに浅めのところにサブ排水口があって水圧を感じるほど潜り込めない。半身浴を推奨しているのだろうかと思いつつバスタブの湯に浸かったまま備品のシャンプーとリンスとせっけんで適当に体を洗う。たまに風呂に入るとヒゲを剃ったり脂や垢を落とすのに時間がかかってしょうがないが、前日に入ったばかりだと入浴はあっという間に終わってしまう。北海道は涼しくて汗もかかないし。

そうそう、バスタブで思い出したが、ホテルは立地条件によって同価格帯でも部屋の大きさが著しく異なる。
5年以上も前の話なので現在では当てにしてもらっても困るが、博多(福岡)で宿泊するなら東急innである。ツインで泊まってもかなり安上がりだったように憶えている。建物同様調度品もチープだが新品同様である。テレビデオもあったりする。なに、壊れて買い換えるにしても安いものだ。そしてバスタブがデカイ。正反対に絶対泊まってはいけないのが天神にある某ホテルだ。立地条件からして比較的割高料金なのだが、部屋のサイズはヒトの居住限界を遥かに下回っている。ベッドは足がつかえて頭を打つほどのサイズで、バスタブに至っては当時 身長174p 体重52s であった僕の体がまったく入り込めなかったという衝撃的な狭さを誇る。ほとんどの男性客が入浴不可能だろう。ユニットバスというものが既製品の中からサイズを選ぶのだとしたら通常このサイズはラインナップされないだろう。ホテルという大口顧客に無理難題なサイズを指定されてやむなくつくらされたユニットバスなのかもしれない。まあ、終電を逃した酔っ払いが駆け込んで倒れこむぐらいにはちょうどいいのだろうが明日の仕事の為に脳に充分な睡眠を与える必要がある人にとっては鬼門である。

娯楽の王様?:
外は大窓に打ちつける雨が鬱陶しいのでテレビに依存する。テレビではあまり台風の予想進路や速度といった情報を流さないので公営放送から TBS 系にシフトする。最初は東京都の抱える問題の話だったのが札幌市との相似点を反復し始めて、ああ、ローカル番組だったんだと気づく。17:30を過ぎてもなお北海道ローカルは続く。本放映はあまり見られないから DVD で続けて見ていて、それでもたまに本放映が見られるとちょっとうれしい「機動戦士ガンダム SEED 」だけれども、地方によっては放映時刻が違うのかも、と思っていたところで唐突にローカル番組は終了し、それっぽい CF に続いてそいつは始まった。じーっと見てたけど、ほとんど印象に残らなかった。やっぱり通して見ないとダメだ。そしてチャネルを変え続けていると北海道ローカルばかりでとてもつまらない。そもそも僕はスカパーのアニメ専門チャネルしか見ない習慣があるので実写の醜い人間の姿ばかりを映すテレビにはうんざりしてきて比較的マシな公営放送にシフトした。僕は明朝の千歳の天候にしか興味がないのでどうでもいい情報ばかりが通り過ぎて時間を浪費し続けていった。テレビって本当につまんないものなんだなぁ。

強制夕食:
そういえばここでしか使えない 1,000円分のクーポン券が 1枚残っている。明日の朝食には宿泊のオマケのバイキング券がある。とくに腹は減っていないが本当に減るのを待っていたら夜が明ける。明日の昼はなにも食べる予定がない。レストランの閉店時間が近い。というわけで僕は自動的に浴衣から Tシャツに着替えてレストラン ユーカラでカニクリームコロッケ(パン及びホットミルクティー)を食べる。黙々と食べながらも 『この半分の量でいいんだよまったく!しまいには残すぞ!』とか思いつつ、全部食べないと帰してもらえないような気がしてきたので全部食べる。僕には常人の 1人前分の食事を摂ることが苦行に思えてならない。かといっていつでも好きなものを食べられるとは限らない旅先において食事を残すことはのちに悔いる結果にならないとも限らない。最後にミルクティー 2杯を飲んで胃が臨界量に達した。満腹感を快感に感じる人もいるかもしれないが僕はどうにもこの重苦しい感触が苦手である。中国だと出された料理を残さず食べてしまうと出した方が客を満腹にさせられなかったと残念に思われるので多少残した方がよい(円滑にゆく)らしい。一見してうらやましいが、出す方はなにがなんでも客を満腹にさせてやると意気込んでいるわけだから考えようによっては非常に恐ろしい。僕は、満腹などというのは不自然で無駄にゼータクな状態だと考えているからである。

そして千歳の夜が明ける:
行動計画によれば 21時就寝なのだけれど、部屋のアラームとモーニングコール両方をセットしていても寝過ごすのが怖くて眠れない。前日も寝ていないというのに…つーか余計爆睡してしまう可能性も高いわけだが。相変わらずやむことのない小雨が打ちつける水滴が窓に流れる。テレビはソ連の映画かなにかを流しているが耳に入らない。浴衣は鬱陶しいので Tシャツのままベッドをごろごろしながらときどき公営放送の台風情報を確認する。暴風域は千歳を抜けた、というかかすっただけで北海道太平洋側へ変針していくようだ。状況は好転しているとみていい。あとはこの小雨がやんでくれればノー問題である。起きていてもなんにもならないのだがまんじりともせず朝がくるのを待っている。じーっとしてると雨が降ろうが晴れようがもーどーでもいい気分になってくる。イカンイカン。とにかく早く朝になって答が出ないかなあ…長い静寂…すっかり雨はやんで朝陽が昇った。成り行き任せの長い博打に望外の勝ちを拾った僕はそれだけでいくばくかの達成感を得る。



早朝バイキング:
午前 6時からレストランでバイキング。この早朝にそこそこの客が集まっている。椀に割り落とされた生卵が美味しそうだったので、滅多にないことだが米飯を少なめによそって、生卵をほぐして白いところを除去して、しょうゆをかけてかきまぜ、米飯にかけてかきこむ。実に適切な量である。デザートにメロンを 2切れ食べる。最後に牛乳があったので小さいグラスで何杯も飲む。前方のカッチリしてそうな人のトレーには色とりどりのおかずが並び、まんべんなく食べ終わってゆく。極めて健康的な食事だろうが美味そうには思えなかった。



そして、運命の航空祭当日……:
7:20頃、着替えて支度して荷物まとめて出発準備完了、てところで千歳基地に聞く『飛行展示、ありますよ!ゲートはもう 7時から開いてますよ』とのことで多少バタバタしながらチェックアウト、徒歩で出発、しばらく歩くと基地ゲート到着。ほとんどがクルマの客で歩いていく人は疎らである。通りすがりの自衛官の方々の挨拶に倣って『おはようございます!』と元気よく挨拶して自分に喝を入れる。これからがお楽しみの本番なのだ。

航空祭の内容につきましては下記↓
航空系 / 2003 航空自衛隊千歳基地 航空祭 をご覧ください。



ああっ、まだまだ書き切れないっ…といったところで、

つづく




□ ノースペシメン
|
・―□ 日記系
    |
    ・―□ 03年8月