□ ノースペシメン
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・―□ アニメ感想系
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    ・―□ To Heart
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        ・――□ 第1話 新しい朝
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        ・――□ 第2話 放課後の出来事


[アバン]
浩之、あかり、志保、雅史の四人。みんな揃って商店街で寄り道でしょうか。通りがかったCDショップに貼られた Childish An Hour のポスターの前で足を止め、近々開催されるライブの話になりました。みんなで行きたいとあかりは言うのですが、チケットは手に入りそうにありません。
冒頭の会話、話題は何なのかわかりませんが、浩之と雅史のやりとりに志保は横から「ウソウソ」と口をはさみます。何かにつけて志保は浩之を頭から否定しようとしています。浩之が日頃の疑念を表明すると、志保は浩之の話を信じることは「ない」と言い切ったりします。なんかすごいですね(笑)。そんな相手とどうやってコミュニケートすればいいのでしょうか。楽しそうですけど、これは志保が一方的に浩之に甘えている状態でもあります。漫画「究極超人あ〜る」で鳥坂センパイはあ〜るの意見を自動的に「却下」すると嘯きますが、これと同様に志保の言いがかりは傍から他人が見ているともはやイジメに近いです(笑)。志保の言葉を本気に受け取って相手をすれば喧嘩になってしまうし、完全に受け流してしまわずにそこそこ相手をしてやらないと可哀相でもあります。浩之は半分ムカつきつつ、実にナチュラルに志保を捌いていますね。あかりはその二人のやりとりをにやにやしながら見ています。1話終盤の電話シーンを思い起こすと、あかりと志保の場合では完全にあかり側が聞き役になって何でも頷いてばかりという気がするので、志保にとってはあかりと浩之の1セットで話し相手としてちょうどいいバランスになっているように思えます(志保にとって雅史はなんなんだろう・・・?)。

Childish An Hour の新曲のポスターに最初に気づいたのはあかりでした。あかりはみんなで行こうと提案します(このとき浩之はポスターに見入っていてあかりの方を見ていません)。あかりはチケットの予約が即日埋まっていると聞いてちょっとがっかりしますが、ポスターの前から立ち去るのは四人の中で最後です。この未練がましさから、ライブに行くことへの執着は一見あかりが最も強そうですが ・・・ あかりにとってはみんなで行くこと(=浩之と一緒に行くことと同義)が目的なので、決してライブ自体に対する執着が最も強いとは言い切れないと思います。立ち去り際、あかりはポスターの方ではなく、去っていく三人の方をじっと見ていて、ちらっとポスターを振り返ると、すぐにみんなを追いかけます。細かい芝居ですね。

あかりの次に志保が「ギタリストがかっこいいのよねぇ」と感嘆の声を上げます。「今世紀最大のライブ!」と大袈裟に口にしたり、会場やチケット状況などの情報に詳しかったり、ミーハー気取りの志保にとっては注目されているアーティストのライブに「行ったことがある」というステータスは無条件に欲望の対象となるようです。しかしすぐに「無理無理」と言ったり、いずれ芸能界デビューしたら手配してあげると妙な合理化の言葉がいきなり出てきてしまうあたりはどうでしょうか。さほど強い執着があるわけではないような気もするし ・・・ 諦めてもいい理由を必死で探しているということは逆かもしれません。ポスターの前から立ち去るのは二番目、「もっと現実的になれってこと」と突っ込みを入れた浩之に言い返すことが目的なわけで、興味の対象は既に浩之との次の会話でしょう(浩之は志保がデビューすることが非現実的だと言ってるんじゃなくて現在の状況を解決する手段としては非現実的だと指摘したわけですが、そこらへんの意図的な誤読が志保の言いがかりのつけどころですね)。

雅史は、今週この沿線でライブがある、という情報を知っていました。一応、ライブには相当の興味があるようです。ポスターの前から立ち去るのは三番目で「あかりちゃん、行こう」と声をかけます。

志保の「カッコイイ」との嬌声に対して浩之は「まったく、女ってのはそういうところしか見てねえんだからな。少しは音楽性に注目しろっての」と言います。浩之のこの言葉の解釈として「カッコだけで音楽性に劣るアーティストに騒いでんじゃねえよ、他にもっと音楽性に優れたアーティストがいるだろうが、まったく」と「このアーティストは素晴らしい音楽性を持っているのにその点を評価せずカッコだけで騒いでんじゃねえよ、お前らはこのアーティストの素晴らしさが全然わかってねえよ、まったく」というのが想定できます。この場合は後者だと思います。浩之はあかりの提案(みんなで行こう)と志保の答(チケットは手に入らない)を聞きながらも、そちらには顔を向けずに目を見開いてポスターに釘付けの様子です。浩之がこういう風に興味をあらわにするのは珍しいので、よっぽど好きなんじゃないか、でも志保のミーハーレベルで好きだってのと同じに思われると癪だからというプライドで敢えて明言はしないけど密かに熱烈な楽曲のファンだったりするんじゃないのかと、僕は思うのです。ポスターの前から立ち去っていくのは浩之が最初です。浩之は無言のままチケットはもう手に入らないという会話を聞いていて、志保の非現実的な言葉に「今してくれ、今」と敢えて子供がねだるように言い放ち、早々に立ち去ろうとします。他の三人よりも行きたいと思っているからこそ無いものねだりで未練を残したくない、と浩之ならば考えるのではないでしょうか。
志保やあかりはこの浩之の言動をどのように受け取ったでしょうか。どちらでも受け取れる言葉は受け手の判断でどちらかの解釈に収斂する筈ですが、曖昧な言葉は実際には曖昧なままの意志として解釈されるとも思えます。それは視聴者も同様で、浩之がどれくらいこのライブに行きたかったかというのは多少意見が割れるところだと思いますが、僕は浩之は実はすごく行きたかったのだという解釈で進めます。

この Childish An Hour のポスター、なんかカッコいいですね。アニメToHeart放映直前の宣材には必ずといっていいほど出てきたビジュアルです。見る前はこういう派手なところの完成度に「おっ」と思うことで作品の期待度が決まってしまったりするんですよね(・・・僕だけかな)。ToHeart世界には馴染んでいて、しかも浩之達の日常とは違う世界、という微妙なところを巧く表現している画稿だと思います。

そういえば浩之は右手に腕時計をしているので左利きなんですね。って1話でもそうだったんだけど前の感想で書き忘れたのでここで書いとこう。この腕時計のリュウズボタンは左側にあって、右利き用の普通のリュウズに相当するものとすると逆位置なような気もするんですが、大きな押しボタンみたいだから右利きの人が左手にして右手親指で押すものだとすると不自然ではない気もします。左利き専用(?)なのか、どっちなんだろ。
[オープニング]
オープニング映像について 及び オープニング曲について 参照。
他の方のToHeartページで得た情報ですが OP の玄関のレミィに隠れるように理緒がいるらしいですね。僕は確認できなかったけど。あと、プレステ版との違いについては細かい点が色々あるようです。忘れずにそのうち修正しとこう。
[CM]

[Aパート]
サブタイトルテロップ:放課後の出来事

下校時間、これから「放課後」です。
あかりは週番の引継ぎ会で遅くなるのですが、浩之は待ってはくれませんでした。
下校する生徒達が出て行く校門。見えそうで読めない校名プレート。浩之達の学校名の設定は無かったような気がする(綾香やセリオが通うのは「寺女」ですが)。スポーツ物で対外試合とかあったら困るなぁ(雅史のサッカーの試合とか二次創作系の人達は苦労しそう?)。

「じゃ、がんばれよ」と浩之が去った後のあかりの台詞、「もう。待ってて欲しいとは言わないけどさぁ」は、口に出して言っています。フレコミでは "あかり主観" ですし、第1話はあかりのモノローグ(=心の声)を連発してましたから、ここはモノローグ処理(口パクなし)でもよかったような気もしますし、この台詞自体あかりの心情の説明なのでその表情のみで表現し(というか実際の作画で充分表現できてるから)省略することもできたとは思いますが ・・・ 第2話はあかり主観ではなく客観視点ですから、敢えてあかりのモノローグを口パク台詞として強調したのかも。効果としては(既に浩之は去っているので)その声を誰も聞くことはないのですから同じと解釈してもいいですし。
帰ろうとしていた浩之を雅史が呼び止めます。
雅史は Childish An Hour のチケットを 2枚だけ手に入れたということです。
雅史はサッカー部の部活があるので、浩之は志保とあかりに話しておくことにしました。
チケットを入手できたのは雅史のお姉さんの昔のバイト先のCDショップだったからだそうです。雅史のお姉さんといえば名前は・・・忘れました。確か今は妊娠中で実家に帰ってきてるとかいう設定だったような記憶が・・(うろおぼえ)。プレステ版では一度(女の子との約束がなければ)雅史の家に遊びに行けたのですが、雅史の家やお姉さんは画面には出てこなかったようです。

手中の 2枚のチケットを見ながら、浩之の脳裏には先日(アバン)でのあかりの嬉しそうな横顔(「ねえ、みんなで行かない?」)がよぎります。アレ? 浩之の考えが観客に覗けてしまうというのは今回はちょっとイレギュラーな描写です。
週番の仕事(家庭科室の掃除?)をしているあかりを志保が呼びます。
志保は Childish An Hour のチケットを 2枚だけ手に入れたということです。
あかりは週番の引継ぎ会があるので、志保は浩之と雅史に話しておくことにしました。
志保ちゃんの人脈とかわいらしさを駆使したそうですが、2枚が限度でした。プレステ版のシナリオから読み取れる志保の交友関係からすると、志保ちゃんネットワーク(人脈)にはかなり怪しい部分があるのですが・・・。
浩之は、(あかりは週番の引継ぎ会なので)志保を求めて校内探索に歩き回ります。
まずは志保の 2-A の教室。いつものデイバッグがあるのでまだ校内にいるようです。
次に吹奏楽部が練習中の音楽室。浩之「こんなとこいるわけないか」 ・・・ なんかゲームやってるみたいな気分。こういう場合一発で当たりを引けるワケはなく選択肢を全部試してうろついているとそのうちフラグが立って出会えることが多いものです・・・。
中庭を通って、バレーボール部が練習している体育館。浩之「ここにはいてもいい筈だけど」 志保は体育館とか運動部と縁があるのでしょうか。ちょっと意味不明ですがもしかしてもしかすると志保はバレーボール部の幽霊部員なのかもしれません(そうかー?)。
次になぜか女子ばかりの水泳部が練習しているプール。水着の女子達と目が合った浩之は、慌てて口に出して志保を探すエクスキューズを発しながら去っていきます。女子の方はとくに騒ぐでもなくただ呆然と見送ります。アニメの浩之は水着(5話ではミニスカート)などの露出度の高い名も無い女子の肢体には興味を示すようです。知り合いの女の子に対してはそんな素振りは見せない、実際そんなものかもしれませんね。
次はレミィが練習している弓道場。アニメのレミィは、ガイジン風の訛りだし、弓の射的は普通に巧いし、日本語の諺は微妙に間違えるし、ゲーム版とは全く逆の設定です。レミィ専用の回は無いので、独特のエキセントリックな部分を抑え、わかりやすさを優先したのでしょう。「好機逸すべからず、光陰矢のごとしよ!」 浩之はチカンと間違われたということですが ・・・ まあ更衣室までは覗いてないんでそのへんがボーダーラインなのですね。ゲームだとここでレミィの弓の見学イベントの前提フラグが立ったと考えられますが・・・何も起きないのです(涙)。
週番の仕事を終えて引継ぎ会に向かうあかりは、廊下の窓から中庭に浩之の姿をみつけます・・・が、委員長とぶつかってしまい、落とした本を拾う手伝いをします。浩之の姿はもうそこにはありませんでした。
これが、ユーザーがあかりの行動を決定するゲームであったなら、「A.委員長を手伝う/B.浩之を追いかける」の選択肢があるところです。「手伝わんでもええよ、急いでるんやろ」という委員長の言葉にしたがってもしBを選択していたならば、あかりに対する委員長の好感度は下がり、後々の委員長関連のイベント発生に支障が出たかもしれませんし、また、浩之とあかりであれば妙な気兼ねはなく 2枚ずつのチケットの件を言い出して万事解決していたところでしょう。逆に言えば、Aを選択したのは(後の回での)委員長と仲良くできたらというあかりの想いの前フリ(委員長の「これから気ぃつけよ」の言葉にはかなりの手応えが(笑))と、第2話自体のすれ違いのドラマを成立させた選択ということになります。キャラの自然な行動原理とドラマの作為(及び布石)の両者に適った選択ということかな。
再び、志保を求めて校内探索に歩き回る浩之。
屋上です(昼休みの委員長なら定位置なのですが)。浩之「ここにいないとすると、どこにいるんだぁ?」 そろそろ全選択肢を調べ終わって志保と出会いのフラグが立つ頃合いですね・・・。
週番の引継ぎ会に出席しているあかり。
志保が浩之達にまだ会えていないのではと心配します。
ここで考え事をしているあかりはモノローグです。うーむ、さっき書いたことと矛盾するな。
『なんだか浩之ちゃん達に嘘ついたみたいだし・・・』 まあこのシーンでは周りに人がいて、考え事を遮られてのあかりの台詞があるので、ということですか。
浩之は、中庭の自販機でジュースを買って一休みです。志保のことをぼやいていると志保登場。
志保も浩之を探していたようです。
ようやく互いに探し回っていた浩之と志保が出会えました。浩之「志保のアホめ」志保(OFF)「誰がアホよ!」 この絶妙のツッコミのタイミングから浩之と志保の視線の切返しが始まります。何の用なのか、「「それは・・」」で最初に台詞がカブって会話が途切れます。「とりあえずお前も何か飲めば?」「そ、そうね、まだ暑いし」 中庭の木立から 9月の太陽が射して一時休憩、ここで CM 突入です。
アイキャッチA:音楽 No.07「マイ・フレンド」 志保のテーマ(今回は志保の話ですね)

[CM]

[Bパート]
アイキャッチB:音楽 No.07「あなたの横顔」 あかりのテーマ

ジュースの自販機を挟んで浩之と志保の対峙。互いに用を言い出しかねています。
結局二人とも 2枚ずつのチケットのことは話し損ねてしまいました。
志保「やっぱフルーツ牛乳よねぇ」浩之「オヤジくせっ」・・・浩之はおそらく志保が腰に手を当ててプハァッとジュースを飲む姿のことを評して言ったのでしょうが、バカのひとつ覚えのカフェオレと反撃されます(浩之のカフェオレはゲームでもお馴染みですね)。志保の攻撃はこのように意図的(?)な誤読から開始されます(インネンをつけるともゆう)。一方的な中傷に耐えて受け流す浩之は、志保より少しはオトナだというプライドからでしょう。

浩之 『雅史にはオレから話すと言ったけど、いざとなると話しづれえなぁ』
志保 『もう〜、チケットが 2枚しかないなんて、どう言ったって気まずいじゃないのよ〜』

第2話の特徴として浩之や志保の心の声が観客に開示されるというのがあります。第1話を見た印象から、アニメの To Heart というのは、あかり以外の内面の声は一切窺い知ることができない、非常に集中力を要する作品だと思っていたのですが・・・第2話のこれは全編を通して見た後でも割とイレギュラーなことだったと思います。第2話の話の構成上、4人各々に見えている手札、その少ない情報から読める各人の理解進行というのがメインの筋なので、観客には 4人の手札を含め心情までも多少正確に開示しておく必要があってのことだと思います。

「あのよう」「あのさぁ」で再び台詞がカブり、どちらが用件を言い出すかで再びモメます。わかりやすいですね。

そこへ唐突に来栖川先輩(初)登場で話が横道に逸れます。第3話へのネタフリ、というか話を横道に逸らすことそのものが目的のとくに意味無しシーンでもありますが、一応僕は来栖川先輩萌えな人なので要注目です。来栖川先輩が普通に歩いているだけでちょっと感動です。ゲームではほとんどバストアップなのですが、全身を見ると先輩は黒い靴下が印象的です。アニメの先輩は(とくに Win版と比べて)髪のボリュームが大きいようです。僕は頭骨のラインにぴったりと流れるような Win版の先輩の髪のデザインの方が好きだったのですが、アニメ版の先輩の半分横髪に隠れるような横顔もなかなか良しです。浩之はまだ知り合いではないようで、志保の説明があるのですが、今回のところはあまりくどくはありません。

さて、話を再開、「でよう」「でさあ」・・・というところで再三のカブリ。沈黙の二人の前を運動部の女子達が駆け抜けていきます。彼女達の話題は今夜の Childish An Hour のライブです。ネタ振ってくれたのはありがたいような、でも逆に気まずい雰囲気に。「「チケットさえあれば」」で、またもカブリ。

浩之 『なにやってんだオレは。ますます言いづらくなっちまったじゃねえか』
志保 『もう〜、これ以上このムードには耐えられそうもないわ〜』

「なあ」「ねえ」 5度目のカブりで話が途切れます。
浩之は何か隠し事をしている、ということから、志保は自分抜きで 3人でカラオケに行ったことを思い出し、浩之を責めます。浩之にしてみればそんなこともあったかもしれない、程度のことでしょうが、志保にとっては今でも相当根に持っている出来事のようです。
志保にとって、浩之とあかりと雅史の 3人は幼稚園の頃からつきあいの長い幼馴染で、自分は後から(中学の頃に)加わった者だ、という認識を吐露します(現在も高校2年のクラス替えで 4人の中で自分だけ違うクラスになったという孤立感もありますし)。
志保は 3 対 1 の友人の話から、浩之とあかりの親しい関係の話題にすりかえます。ジュースの紙パックをギシギシと握り締め「とくに」と断ってあかりの名を出す志保の心中はもちろん窺い知れません(本人に自覚も無いでしょうけれど)。
志保の "浩之とあかりの関係" という話題に対し、浩之は "志保とあかりの親友関係" で切返します。浩之にしてみれば 4人のそれぞれの友人関係が等価に重いものであって、決して 4人の中で志保だけ関係が薄いというわけではないという意思表明でしょう。
志保が本当に提起したかった関係は "浩之とあかり" に対する "浩之と志保" だったのかもしれません。しかし第2話の段階では志保の方にも明確な自覚が無い為、この問題は一時留保されます。

とかなんとかやってるうちに時間も押してきました。
浩之はあくまで仮定の話、ということで 2枚のチケット問題を切り出します。
浩之は、その問題の解決方法として、チケットを取ってきた人と、その取ってきた人が一緒に行きたい人が行く、ということで打診をかけます。志保もそれに同意します。ならば実は・・・と切り出す条件は揃いました。浩之側にしてみれば、まずチケットを取ってきた雅史、そして雅史が選ぶ(に違いない(笑))浩之がライブに行く、と断りを入れることができるわけです。その際に志保側は、え、それなら実はこっちも 2枚あって・・・となる筈、でした。ところが・・・

ちなみにだ、ということで浩之は、志保なら誰を選ぶか、と問いかけます。この辺の真意はわかりませんが、好奇心として、素直になれない友人関係の、というか常に本心を包み隠しているような志保の本音を知りたいという気持ちからかもしれません。その問いに志保は、あかりか、雅史、と答えます。バカですねぇ、仮に、あかり、とだけ答えておけば無難にかわせたものを・・・というか、敢えて浩之以外ならいい、と答えなければならない、素直になれない志保の心の障壁もあるのでしょう。
浩之にしてみれば、その志保の言い様を額面通り受け取るにしろ、ひねくれた答と受け取るにしろ、面白くありません。売り言葉に買い言葉、思わず「オレも志保だけは誘わねえけどな」と言ってしまい、素直になれない二人の交渉は物別れに終わってしまいます。

別れ際、よほど根に持っているのか志保は再びカラオケの話を出します。自分を誘わないで 3人だけで行くなと。こればかりは本心のようですね。

浩之 「しょうがねえよな。みんなで行けねえんだから・・・」
週番引継ぎ会が終わったところで、あかりは隣の部屋のプリントを届けるよう頼まれます。
タイミング悪くそこへ浩之が来て、一瞬遅れて戻ってきたあかりと行き違いになりました。
さらにタイミング悪く雅史が教室に忘れ物をして遅れることになりました。
同じ時刻に校門で待ち合わせをしている志保とあかりに鉢合わせ、は回避されました・・・。
窓からのぞく校舎内の俯瞰を織り交ぜて、立体的に見事にすれ違いが成立していきます。

あかり 『チケットのこと、どうなったのかなぁ』・・・あかりは今回、完全に傍観者の立場ですね。
待ち合わせの校門で待っていた志保と駆け寄ってくるあかり。二人は電車でコンサート会場に向かいます。
コンサート会場で列に並ぶ志保とあかり。志保は「ごめん、あのね・・・」と告げて・・・
校門で俯いていた志保は 2枚のチケットの件について「そのことなら万事オッケーだから」・・・浩之達に話したかどうかを疑っている、とまではいきませんが、なんだか浮かない顔をしているなという感じで、あかりは不思議そうに見ています。
電車の中、相変らず俯いている志保に向かって、あかりは「(志保が話をつけているとはいえ)なんか浩之ちゃん達に悪い気するなァ」と話しかけます。その自分同様にうしろめたいという理由で志保が浮かない顔をしているのか、それとも浩之達と話がこじれたのか、もしかしたらきちんと話せていなかったのか・・・何も答えない志保の様子から、確証は得られませんがあかりは少なからず不審に思ったことでしょう。
このへんからわかりやすかった前半までとはうってかわって、心の声(モノローグ)はぱったりと聞こえなくなり、心象表現は作画の表情のみとなり、カット毎の時間もツメツメとなり、唐突に集中力を要する表現になります。
さらには、志保「ごめん、あのね・・・」の台詞以降は次のシーン(浩之と雅史)にカメラが移され、志保があかりに何を告げたのか、観客の想像に委ねる形となっています。
この描かれざる空白のシーンで何が起きたのか、志保があかりに事情を全て話したのか、唐突に理由を告げずに観るのをやめたのか ・・・ あかりと納得ずくでその場を去るなら全てを話した方が話は早いのですが ・・・。
遅れてコンサート会場に着いた浩之と雅史。唐突に浩之は観るのをやめると言い出しました。
浩之はちょっとした行き違いで志保にチケットのことを話せなかったと雅史に告白します。
だったら、ということで雅史も観るのをやめようという話になりました。
そこへ浩之達をみつけたあかりが不思議そうに近寄ってきました。
遅れてやってきた志保と浩之の視線の切返し、そしてふと浩之のポケットのチケットに気づいた志保。
考え込む志保。チケットのことを話す雅史。アハハと笑い出し、コンサート会場へ駆け出す志保。
それを見て全ての事情を察したあかりが浩之と雅史に振り向いて笑顔(今回の決めカット)。
「はやく行こ。チケットは 4枚あるんだから」
ここは先のシーンで志保があかりに何と言って会場を後にしたかがキーになってきます。浩之(と雅史)との相似形で考えるならば志保はあかりに事情を話したとも考えられるのですが、このシーンでのあかりの無邪気な態度から、あかりは志保が浩之にチケットの件を話せていなかったことを知らなかった、つまり、あかりは志保と浩之が互いにチケットの件を言い出し損ねていたことに同時に気づいたようです。

あらためて4人各自に見えている手札を考えると、最後に出会った段階で
浩之: 雅史のチケット2枚・チケットの件を話してないこと
雅史: 雅史のチケット2枚・チケットの件を話してないこと
志保: 志保のチケット2枚・チケットの件を話してないこと(+雅史のチケット2枚)
あかり: 志保のチケット2枚(+雅史のチケット2枚)

一番最初に全ての事情を理解したのは志保ですね。しかし彼女はその思考の過程で生じる疑念だとか、全てを察した直後に浩之に優位に立ったような物言いはしていない、ただ、みんなを急かしてコンサート会場へ駆け出していく。

あかりは、その志保の反応を見て、浩之と志保の素直になれない二人のすれ違い話 を同時に理解したという意味において傍観者的視点という風になってたんですね。 最後の笑顔は、自身には罪悪感もなくて、あくまで志保と浩之の間の行き違いと その幸福な解消を同時に微笑ましく思い、その思いは観客と同期するような気もします。 (これがあかり主観ということか・・・?)

ところで、浩之は雅史に(罪悪感から解放される為に)自分の手札を雅史に公開したわけで、 志保&あかりに対する罪悪感を雅史と共有しようとしたとも思われますね。事実雅史 は最後に「ごめん」と(浩之のせいで)言わされてしまっているとも受け取れます。 まあ浩之が悪いというわけでなく考えなしの素直な告白だったとも言えるでしょう。

対して志保は罪悪感をあかりと共有しようとせずひとりで抱え込み、おかげで 浩之のチケットをみつけた直後も、側にいる(何も知らせていない)あかりの存在 が気がかりになっているように見えてきます。(チケットを発見して事実関係が わかってきても志保が反射的に浩之を問いただせなかった一因かもしれません。) 志保がこうした行動をとった遠因として、志保が捉えた4人の関係に昔からの馴染み である浩之・雅史・あかりの3人に対して、自分は後から加わった者であるという 距離感があるようにも思えます(浩之にとっては、浩之とあかり、志保とあかり、 という2つの関係は同じ重みなのですが)。志保はあかりに対して「あたし達が浩之 をかまってやっている」といった言い方をしますが、3人対自分という視点は常に 意識下にあるようです(クラスの違いという現実や、自分に黙ってカラオケに行った ことを根に持っている等)。行列の途上、何も知らないあかりをみつめて悩む表情は このような疎外感も含まれているような気もします。浩之が自身の行為に雅史を (精神的に)巻き込むことに躊躇が無かったのに対して、志保の場合はあかりと浩之 の(自分より深いと考えている)関係性に配慮する気後れがあったのではないか、 それだけに思わず駆け出してしまうほどに解放された志保の喜びは大きく、あかりの 赦しの笑顔も生きてくるような気がします。
(謝辞) ラストシーンの解釈については尾島某さんの Animeall BBS 内での神木さんとの対話を通して再考したテキストから構成しています。


[エンディング]
本編の静止画で構成されています。
□ Childish An Hour のポスター(アップ)
□ 教室のあかり
□ 自販機の前の浩之
□ 電車の中で俯く志保
□ チケットを手にウインクしている志保
□ 廊下でお疲れの智子
□ ライブ会場への夜道の雅史
□ 校舎
□ Childish An Hour のポスター(多数)
□ 一本の矢が立っている的
□ 弓を引こうとしているレミィの後ろ姿
□ プールで水着の女生徒 / 眺めている浩之
□ ムッとしている志保の横顔
□ 校舎の窓
□ 志保の手の2枚のチケット
□ 驚いているあかり
□ 中庭の初秋の陽射し
エンディング曲は放送局によって2種あります。
サンテレビでは「Access」by SPY / キッズステーションでは「Yell」 by 川澄綾子 です。

[CM]

[次回予告]
陽だまりの中
次回は来栖川芹香先輩のお話です。
うーん、楽しみ ・・・ ってもう見てるんだからワザとらしくないか?

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